金沢大学 理工研究域自然システム学系の山田敏弘准教授は、京都教育大学および日本女子大学との共同研究について、根の先端の生長点である「根端分裂組織」の細胞分裂の動態をシダ植物と種子植物で比較することで、両者に明確な違いがあることを見出し、それぞれの根が別の器官であることを明らかにした。
植物の根端分裂組織の細胞は、根の細胞を作り出すために活発に分裂する。種子植物の根端分裂組織には、細胞の分裂が活発に起こらない「静止中心」と呼ばれる部分があり、根端分裂組織で作られた細胞が使い尽くされないように働き、根の無限成長性を支えている。
一方、シダ植物のシダ類や小葉類について、根端分裂組織における細胞分裂を調べてみると、どの細胞も同じように分裂しており、静止中心がないことがわかった。上図では、緑色に染まった核のある細胞で活発な分裂が起きており、静止中心のように分裂をあまりしないところは見られない(白丸点線付近)ことがわかる。しかし、シダ類や小葉類の根にも無限成長性が見られることから、シダ植物の根は、種子植物とは異なる仕組みで無限成長性を実現していることを示している。
また、シダ植物の中で、小葉類の一部の植物が静止中心のような組織を有していることも明らかになった。上図では、根の頂端部には、細胞が分裂をほとんどしない、静止中心のような領域(白丸線内)がある。静止中心のような組織を持つこのグループは、静止中心を持たないグループから進化したものと考えられる。
本研究結果は、2017年6月6日付で、イギリスの専門誌「New Phytologist」に掲載された。