東京大学(東大)は6月23日、高速に多数の細胞を撮影する「OTS(Optofluidic Time-Stretch)顕微鏡」と機械学習による細胞分類を用いて、ヒト血液中における血小板凝集塊の高精度検出に成功したと発表した。
同成果は、東京大学大学院理学系研究科化学専攻 姜逸越大学院生、雷诚特任助教、合田圭介教授、同医学系研究科臨床病態検査医学分野 安本篤史助教、矢冨裕教授らの研究グループによるもので、6月19日付けの英国科学誌「Lab on a Chip」オンライン版に掲載された。
血栓性疾患のうち、冠動脈疾患、脳血管疾患および末梢血管疾患などのアテローム血栓症は、欧米や日本における主な死亡原因のひとつである。アテローム血栓症は、動脈硬化部位で活性化し凝集した血小板が血栓を形成し、血管が詰まることによって引き起こされる。そのため治療には、血小板の凝集を抑制する抗血小板薬が広く使用されている。
また血液中における活性化血小板の存在は、アテローム血栓症と関連があることが示されており、同疾患の存在や進行度を測る潜在的な指標となると期待されている。しかし、従来の技術では、標識や検出に長時間を要し、またサンプル処理の操作に依存して結果がばらつくなど、血液中の活性化血小板を正確かつ安定的に測定することは困難であった。
今回、同研究グループは、活性化して凝集塊を形成した血小板をヒト血液中から高速・高精度に検出する技術を確立した。具体的には、健常者ヒト全血サンプルを調整し、試験管内で血小板刺激物質のコラーゲンを添加して血小板凝集塊を作製。密度勾配法を用いて赤血球を分離後、マイクロ流体チップを用いてサンプルを高速に流し、OTS顕微鏡を用いて毎秒1万細胞の高スループットで全細胞を撮影した。これを機械学習により形態学的に分類したところ、血小板凝集塊を単一の血小板と白血球から96.6%の高い特異性と感度で区別することに成功した。
同技術は、従来の顕微鏡による観察に比べて高速かつ無標識で血小板凝集塊を検出できるため、同研究グループは、これまでの研究で示されている各種疾患と血小板凝集塊との関連性をより詳しく調べることに役立ち、血栓性疾患の研究の進展に貢献するものと説明している。将来的には診断や治療モニタリングなど臨床応用への展開も想定しているという。