九州大学(九大)は6月22日、歯周病原因菌であるジンジバリス菌(Pg菌)の菌体成分リポ多糖(LPS)を全身に慢性投与することにより誘発されるアルツハイマー様病態の原因酵素を特定したと発表した。

同成果は、九州大学大学院歯学研究院 武洲准教授、中西博教授らの研究グループによるもので、6月10日付けの欧州科学誌「Brain, Behavior, Immunity」に掲載された。

近年、重度歯周病の罹患と認知機能低下との相関性が報告され、Pg菌LPSがアルツハイマー病患者の脳内に検出された。このためPg菌が脳炎症を引き起こし認知症の悪化を招くと考えられていたが、詳細なメカニズムは不明であった。

そこで今回、同研究グループは、若年ならびに中年の野性型マウスならびに炎症反応に関与することが知られているカテプシンBの欠損マウスを用い、全身投与したPg菌LPSが学習行動や脳炎症に及ぼす影響を解析した。

この結果、Pg菌LPSを全身に慢性投与した中年マウスでは、ミクログリア活性化による脳炎症、アミロイドβ(Aβ)のニューロンにおける産生・蓄積ならびに学習・記憶能力低下などアルツハイマー様病態を発症することが明らかになった。若齢マウスでは、このようなアルツハイマー様病態を示さなかったという。

また、カテプシンBを欠損した中年マウスではPg菌LPSを全身に慢性投与を行ってもアルツハイマー様病態は生じなかったことから、カテプシンBが、Pg菌LPSの全身への慢性投与により誘発されるアルツハイマー様病態に関与する原因酵素であることも明らかになった。

同研究グループは、今回の結果から、カテプシンB特異的阻害剤は、歯周病によるアルツハイマー病の発症と症状悪化を阻む可能性があると説明している。

カテプシンBが歯周病から脳への炎症シグナル伝達に関与する様子 (出所:九大Webサイト)