産総研(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)は、製品やサービスの開発における構想設計段階で、顧客起点で開発方針をつなぐプロセスをシステム化した「構想設計の手法と道具」をプロトタイプとして公開する方針を発表した。
全く新たな製品を創り出すことは至難なことだが、新たな製品が作り出されなければ"ものづくり"は停滞してしまう。産総研では、日本のものづくりでは、製造プロセスの設計など作り込む部分部分を重要視する傾向があったが、近年では設計仕様決定力や顧客視点の構想設計の重要性が認識されつつあることを背景として挙げている。
「構想設計の手法と道具」は、企画やデザイン、設計など"考える専門家"と調達や製造など"作る専門家"、そして"使う専門家"のアイデアが連携するもので、LANに接続されたPCやマルチタッチ表示環境を用いたWindows動作のソフトウェアとしてプロトタイプ化している。
題材に関係するイメージを収集する「イメージシャワー」とイメージの関係性、距離感の対話でフレームや軸を創る「ブレストツール」、イメージと言葉を紐付けするDBM(産総研開発のソフトウェア、デザインブレインマッピング)から成り、ネットワークを通した自動転送で各段階を繋げている。
使う専門家、作る専門家、考える専門家の各ポジションが個人ワーク/チームワークから成るプロセスを通して使うことで、
1.「使う専門家」のアイデアの有効活用
2.「作る専門家」の知見を開発上流が前倒しで検討
3.顧客視点を関係者間で共有し、デザイン計専門家と工学系専門家の検討の分断の解消
の3つの効果を得られるようになる。非言語のイメージの段階と言葉と関連付けた段階を意識した構想設計プロセスや"共創"を促す環境をソフトウェアを使って作り出すことを目指している。
産総研では具体的に「掃除機の開発プロジェクト」が開始された企業において、"使う専門家"である社員も含めて開発せよとの指令があるなかで、"考える専門家""作る専門家""使う専門家"の社員が具体的にどのように「構想設計の手法と道具」を使っていくかをスケッチを使った活用ストーリーも提供している。
企業に代表される"組織"という枠組みのなかで、いかに対話の壁をなくし、専門用語が飛び交わないイメージで共有しながら集合知を製品開発へ活かすのか?という課題を解決するためのソリューションとなる。今後は、構想設計支援分野の技術成果の橋渡し促進、社会実装を目的として設立する「構想設計イニシアティブ」においてサンプル提供制度により試用企業を募る予定。