静岡大学の池田昌之助教授と東京大学大学院理学系研究科の多田隆治教授、ジョージア工科大学の尾崎和海博士らの研究グループは、中生代三畳紀からジュラ紀の地球軌道要素の周期的変化「ミランコビッチ・サイクル」に伴う日射量変動が、気候変化を介して地球の大陸風化に影響ししてたことを明らかにした。大陸風化は、地質学的時間スケールでの大気中の二酸化炭素濃度の削減、ひいては気候を制御する重要な要素であり、その変動要因について議論が続いていた。
同研究グループは、まず地質調査と化学分析を行い、深海チャートから推定した生物源シリカ堆積速度が、海洋への溶存態シリカの滞留時間以上の時間スケールで、その主要供給プロセスである大陸風化速度の新たな指標となる可能性を示した。さらにこの仮説は、「改良版GEOCARBモデル」を用いて計算した大陸風化速度変動が本研究の推定と大局的に一致していたことからも支持された。
推定された生物源シリカ堆積速度は、ミランコビッチ・サイクルとして知られる10万年から3000万年周期で約2から5割も変動したが、日射量そのものに比べ大きな振幅で変化していたことがわかった。この原因として、当時存在した超大陸パンゲアで形成された大気循環「メガ・モンスーン」に伴う大規模な降水量変動が、大陸風化速度変動を非線形的に増幅させたという仮説を提唱した。
これらの結果は、大気中の二酸化炭素濃度が現在の数倍もあった中世代温室地球における地球システムの応答を解明するうえで重要な成果といえる。
本研究は、JSPS科研費09J08755「特別研究員奨励費」、JP2680026「若手研究(B)」およびJP20150889「海外特別研究員制度」の助成をうけたものだ。研究成果は、英国Nature Publishing Groupの科学史「Nature Communications」に、日本時間6月7日よりオンライン公開されている。