物質・材料研究機構(NIMS)は6月20日、超高感度小型センサ素子(MSS) 、機能性感応材料、および機械学習を組み合わせることで、お酒のにおいからアルコール度数を推定することに成功したと発表した。
同成果は、NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノメカニカルセンサグループ 柴弘太研究員、吉川元起グループリーダー、同量子物性シミュレーショングループ 田村亮研究員、NIMS若手国際研究センター 今村岳研究員らの研究グループによるもので、6月16日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
においは一般的に、数百から数千にもおよぶ化合物からなる複雑な混合気体であることが知られている。そのため、においからその構成成分や濃度など特定の情報を定量的に抽出するには、ガスクロマトグラフィなどの比較的大きな装置によって個々のガス成分を分離して解析する必要があった。
今回、同研究グループは、MSS、機能性感応材料、機械学習を融合して、においから特定の情報を数値化する新たな手法を開発。その一例として、さまざまなお酒のにおいから、アルコール度数という特定情報を高い精度で推定することに成功した。
具体的には、まずにおい分子を吸着するさまざまな材料をMSSの表面に塗布し、ビールやウォッカなど各種のお酒のにおいを吹きかけて、それぞれのお酒に特有の電気信号のパターンを記録。このパターンとアルコール度数とを関連付けて得られる大量のデータセットを使い、機械学習によって、においの電気信号パターンからアルコール度数を推定する予測モデルを構築した。
そして、予測精度の改善のため、機械学習で得られる情報から逆算して、よりお酒のにおいに適した感応材料の選定や、抽出する電気信号パターンの特徴量の最適化を行った。これにより、赤ワインや芋焼酎、ウィスキーなど、学習に使用していないお酒のアルコール度数を高い精度で推定することができた。
同手法は、アルコール度数だけでなく、さまざまな分野でにおいから簡単かつ高精度に特定情報を抽出できる可能性があるという。同研究グループは今後、食品や農産物の品質管理、健康チェック、環境モニタリングなど一般社会や産業界への展開も推進していきたいとしている。