フランクフルトで開催中のISC17の冒頭で、スパコンの性能ランキングである2017年6月の「TOP500」リストが発表された。トップは、中国の「太湖之光」、2位も中国の「天河2号」で、1位、2位は昨年11月の前回リストから変更はない。今回のリストで変わったのは、3位にスイスの「Piz Daint」が入った点である。
Piz Daintは前回のリストでは8位であったが、計算ノードを増設しノード数を1.75倍に増やして、前回9.779PFlopsのLINPACK性能を19.59PFlopsに向上させている。ピーク演算性能では、前回は15.998PFlopsであったものが、今回は25.326PFlopsで、1.583倍である。これに対してLINPACK性能は、前回の約2倍に向上している。LINPACK性能のピーク性能比率は77.35%となっており、これはGPUアクセラレータを使うシステムとしては驚異的に高い値である。
Piz Daintが8位から3位に上がったことで、日本の「Oakforest-PACS」と「京コンピュータ」は1つ順位を落としてそれぞれ7位と8位となっている。
日本国内を見ると、前回は、TOP500に入ったシステム数は27システムであったが、今回は33システムと約20%増加している。日本のシステムの上位10システムを見ると、次の表のようになっている。
国内トップは東大と筑波大のJCAHPCのOakforest-PACSで2位が理研AICSの京コンピュータ、3位がJAXAの「SORA-MA」である。今回新規登録となったのは国内8位の東京工業大学の「TSUBAME3.0」と国内10位のJAMSTEC(海洋開発研究機構)の「Gyoukou(暁光)」である。
国内8位のTSUBAME3.0はSGIのICE XAシステムで、CPUとしてはXeon E5-2680v4を使っている。CPUのクロックは2.4GHzで14コアのチップである。そしてNVIDIAのTesla P100 SXM2 GPUをアクセラレータとして接続するシステムである。
TSUBAME3.0に関しては、今年2月の記者発表の席で構成が発表されており、それに基づいて計算するとピーク性能は12.15PFlopsとなる。しかし、今回のリストではTSUBAME3.0のピーク性能は3.2PFlops、LINPACK性能は約2PFlopsとなっており、記者発表時のレベルには達していない。記者発表時に、松岡教授は、頑張るがISC17に間に合うかどうかは分からないと述べており、全システムを稼働させるのは間に合わず、今回は部分的な稼働であると思われる。
一方、国内10位のJAMSTECの暁光はPEZYグループのExaScalerの開発になるZettaScaler-2.0システムで、CPUとしてXeon D-1571を使っている。このCPUは、クロックは1.3GHzで16コアである。そしてアクセラレータには新開発の2048コアのPEZY-SC2を使っている。
暁光はTSUBAME3.0を超える性能を目指しているという噂もあり、今回の1.677PFlopsというLINPACK性能は、こちらも全系の稼働は間に合わず部分的な稼働になっていると思われる。