富士通は、4月から全社員を対象とした「テレワーク勤務制度」をスタートさせた。仮想デスクトップやグローバルコミュニケーション基盤などのICTを活用することで、在宅勤務だけでなく出張中やサテライトオフィスでの勤務、移動中の業務遂行を可能にし、場所にとらわれないフレキシブルな働き方を可能にするものだ。

この取り組みは、約2年間のトライアルを経て正式に実現された。

富士通のテレワークトライアル(2月28日の行われた記者発表より)

「多様な人材が活躍し続けられる、多様で柔軟な働き方の実現という目的はもちろんありますが、そもそもはホワイトカラーの生産性向上を狙った風土改革の取り組みです。ICTの活用や制度の整備はそのためのもので、テレワークは働き方の選択肢のひとつということになります」と語るのは、富士通 人事本部 人事企画部の永楽智寛氏だ。

富士通 人事本部 人事企画部の永楽智寛氏

富士通は2010年から在宅勤務を取り入れてきた。当時は人事部主導で導入した制度で、週2日まで在宅勤務を認めるというものだった

「今回はトップダウンによる全社一丸となっての取り組みです。2010年当時と比較するとデジタル化も進歩していますし、時間外労働を削減しようという政府主導の取り組みもあります。労働時間を抑えつつ成長するために、ICTを活用した戦略的な働き方改革への取り組みはICT企業としての責務だと思っています」と永楽氏は語る。

すべての社員に適用、魅力ある企業になるための手段

少子高齢化による労働人口の減少や2020年問題もある中、特に富士通が目指すのは柔軟な働き方を認めることで、社員が長く働き続けることのできる「魅力ある企業」になることだという。

「子育て世代の女性をターゲットにした取り組みではありません。さまざまな層に対応するダイバーシティの実現です。たとえば、育児休暇の取得や育児のための在宅勤務といった働き方も、女性だけでなく男性も実施できるようにと考えています。ワークライフバランスをしっかり実現させ、魅力的な会社にしたいですね」と語るのは、富士通 人事本部 人事企画部 シニアマネージャーの佐竹秀彦氏だ。

富士通 人事本部 人事企画部 シニアマネージャーの佐竹秀彦氏

育児とともに離職のきっかけになりやすい介護について、今後が心配だと考える社員が多いことが社内アンケートやワークショップでわかったという。今すぐに介護しなければならないという人は少なくても、離れて暮らす親世代が年齢を重ねることで同居の必要性を感じている人や、近い将来、何らかの介護が必要になりそうだと感じている人が多かったという。

「柔軟な働き方ができなければ、働き盛りの世代が退職することにもなりかねません。また育児や介護の主役になりやすい女性にとっても、長く働きやすい良い会社だと思ってもらえなければ、魅力ある企業とはいえないでしょう。そういった問題への対応のひとつが、テレワーク勤務制度なのです」と佐竹氏は語った。

働き方の課題と解決の方向性(2月28日の行われた記者発表より)