アドビシステムズは6月14日に記者発表会を開催し、クリエイティブ制作に必要なビジュアル素材の検索・購入ができる「Adobe Stock」のアップデートを発表した。
同サービスは、写真やイラスト、動画など約9000万点のデジタルクリエイティブアセットを保有するマーケットプレイス。雑誌や広告、プレゼンテーションなどで使われるビジュアル素材を検索し、購入することができる。同社サービスCreative Cloudとの連携も容易なので、クリエイターは効率の高い作業が可能だという。
今回のアップデートでは、検索方法の刷新、コンテンツの拡充、Microsoft PowerPointとの連携を実施。アドビ システムズのマーケティング部 アドビストック マーケティングマネージャーの吉本龍生氏は、今回のアップデートを通じて「コンテンツの質を下げずにスピーディに制作を進めることが課題になっているクリエイターに対して、ベストな作品を作っていくために必要なものを提供していきたい」と、希望を述べた。
人工知能「Adobe Sensei」を駆使した高度な検索技術
今回のアップデートでは、人工知能とマシンラーニングを活用したフレームワークである「Adobe Sensei」を活用した検索機能「絞り込みフィルター(ベータ版)」を搭載した。Adobe Senseiが写真を解析することで、検索結果から背景ボケの度合い「被写界深度」と全体の彩度「色の鮮やかさ」という2つの要素から絞り込むことができるようになった。
「テキストでは絞り込みが難しい見た目の要素から絞り込めるので、これまで地道に行ってきたビジュアルの検索作業の負荷を軽減できる。また、検索結果の中からどのような写真をクリックしたのかというアクションをAdobe Senseiが学習するので、ユーザーの利用傾向に合わせて検索の精度が高まっていく」と、吉本氏は機能の特長を述べた。 絞り込みのカテゴリーは、今後増やしていく予定だという。
また、同サービスでは2016年11月にリリースされた「ビジュアルサーチ」でも、マシンラーニングの技術が使われている。例えばキーワードで芝生の上で遊んでいる子猫の写真を検索する場合、「芝生 茶色 子猫」といったワードを入力することが多い。すると、ノイズも含めて多くの検索結果が表示されるので、ここから自分の目でさらに絞り込みする必要がある。
イメージに近い1枚の写真を読み込ませるビジュアルサーチを使えば、Adobe Senseiが元の写真を解析し、被写体が何かを理解して検索を実行。高い精度で共通する特徴を持つ画像を見つけてきてくれる。吉本氏は「納得いく画像が表示されるまで何度もキーワードを入力し直す手間もかからずに、制作にかかる時間を節約。ワークフローを大幅に効率化できる」とビジュアルサーチの効果を述べた。
エディトリアルとプレミアムのコンテンツを拡充
2つめのアップデートとして、ロイターとUSA TODAY Sportsのエディトリアルコンテンツ、StocksyとアマナイメージズのプレミアムコンテンツをAdobe Stockで提供開始した点が挙げられる。
これまで同サービスでは、「広告やマーケティングの用途で使われるものを中心に展開していた。さまざまなニーズに応えるためにも、今回ロイヤリティフリーでロイターにある1200万点のエディトリアル素材を提供開始した。アーカイブでは過去120年まで遡った出来事の写真があるので、社史などでも利用できる」と、吉本氏は提携の背景と用途を説明した。
また、USA TODAY Sportsは年間10000のスポーツイベントをカバーしており、毎年50万点の画像が追加されるサービス。USA TODAY Sportsのコンテンツは近日提供を開始する予定とのことだ。
プレミアムコレクションで提供開始されたStocksyは、北米でシェアを伸ばしているフォトエージェンシー。吉本氏は「ビジュアルの訴求力が強くインパクトの強い写真がそろっている」とその価値を認める。
Microsoft PowerPointの作業をしながら画像を検索する
最後に紹介するのはMicrosoft PowerPointとの連携が開始された点だ。アドインにAdobe Stockを追加するだけで、PowerPointのウィンドウ内で同サービスを利用することができる。
「ワンクリックで写真のプレビューができるため、スライドのイメージに合っているか確認しながら選ぶことができるまた、プレビューの履歴も残るので、比較がしやすい」と吉本氏はPowerPointと連動させる利便性を述べた。