IDC Japanは6月13日に記者会見を開催し、国内のブロックチェーン関連市場の予測を発表した。2016年から2021年までの市場成長率は年間平均133%で、市場規模は298億円になると予測している。
ブロックチェーンとは「改ざんできない」「ゼロダウンタイム」などの特徴を持つ分散台帳技術。暗号技術やスマートコントラクト、P2Pネットワーク、コンセンサスアルゴリズムなどの技術要素から構成されており、FinTechの中核技術の1つとして注目を集めている。
IDC Japan シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は「2016年は金融機関のPoC(概念実証)が活発だった。しかし、この先は非金融分野がブロックチェーンをビジネスに活用する取り組みが勢いを増し、2021年には市場規模のうち非金融分野の占める割合が金融分野を上回るようになるだろう」という予測を示した。
ブロックチェーンはP2Pネットワークでつながれた複数のノードが複製を持ち合いながら取引の正当性を確認するという技術であるため、1つの真実を共有することが可能。したがって、ブロックチェーンには、仮想通貨の決済や海外送金に関する手間や時間の大幅削減といったケースだけでなく、サプライチェーン管理の正当性を保証することで製品の価値を担保するケースや、センサーによる納品確認の自動化など幅広いユースケースが考えられるという。
ただし、先行企業の取り組みでも実運用まで至っているケースは非常に少なく、「銀行連合が銀行間送金への適用を検討し始めたり、トヨタが自動車の運転データを共有するために活用を検討し始めたりといった事例があるが、どれもまだPoC段階」と、小野氏は現状について解説した。
同社ではモビリティやビッグデータ、クラウド、ソーシャル技術といったプラットフォーム技術を利用することで、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを創出し、競争上の優位を確立することをデジタルトランスフォーメーション(DX)と定義しており、「ブロックチェーンはDXを加速させる次世代の台帳技術になると考えている」と小野氏は同技術の可能性について語った。
その理由について小野氏は「ブロックチェーンにおって企業間のデータ共有を行うことで、国際間取引やシステム化されていない取引など、あとで食い違いが起きないように確認する手間や時間を大幅に削減できる。また、契約履行の自動化や、アクセス制御とプライバシー保護を提供できることなどもDX時代の重要な要素」と語った。
ただし、「まだまだ課題は山積み」と小野氏は指摘する。「ブロックチェーンは技術的にはまだ揺籃期にある。処理速度やスケーラビリティの不足、決済がリアルタイムに確定できないこと、データを柔軟に扱えないといった機能面での課題に加え、エンジニアや実装ノウハウの不足といった運用面での課題もある」としたうえで、「取引を扱うシステムである以上、常に動いていなければ信頼性を確保できない。ここがクリアできてようやくブロックチェーンの市場が確立されていくと考えている」と意見を述べた。
最後に、小野氏は「ITバイヤーにとっては、現在の大規模なシステムがすでに高度に多くのシステムに接続されているため、ブロックチェーンで急に代替するのは簡単ではない。そのため新たにシステムを構築できる小さなビジネスで取り組むのがよいだろう。また、ITサプライヤーは技術的な課題を克服し、導入先の顧客との対話をしっかり行うことが大切。ビジネスチャンスは多く生まれると考えている」とアドバイスした。