日立製作所は、顔認証機能を搭載した新型の「呼気アルコール検知器」を試作し、日立キャピタルオートリースと実証試験を開始することを発表した。

今回発表された新型の呼気アルコール検知器。スマートフォンに取り付け、顔認証による本人確認と呼気の測定を同時に行う。

同社は、飲酒運転による事故撲滅をめざし、2016年3月に本田技術研究所と共同でポータブル呼気アルコール検知器を試作した。同検出器は、人間の呼気かどうかを判別して不正利用を防止する機能を備えていたものの、検査の際に身代わりを立てれば「なりすまし」が可能であることや、ドライバーの検査結果を一元管理できないという課題があった。

そこで今回、これらの課題を解決した新型の呼気アルコール検知器を試作し、日立キャピタルオートリースと共同で実証試験を行うこととなった。

呼気と利用者の顔写真が同時に認識されないとアラートが表示される。これにより、なりすましによる検査すり抜けを防ぐ。

同機器は、バッテリーや関連回路の削減により従来と同精度を保持しながら、サイズが約3分の1に小型化された。これにより、スマートフォンへの取り付けが可能となり、また、検知器と連携するアプリにより「顔認証」機能が使えるようになった。

使用者は、検知器をスマートフォンに装着したのちアプリを起動し、アルコール検査と同時に顔画像を取得する。その後、運転席にスマートフォンを設置して再度ドライバーを撮影することで、アルコール検査者とドライバーの画像とを照合して本人確認が行われる。これにより、アルコール検査だけを身代わりに頼むといったなりすましを防ぐことができる。

2016年に発表されたver.0から2回のバージョンアップを重ね、今回発表されたのがスマートフォン搭載機であるver.2。

また、検知器が取得した呼気アルコール検査結果をスマートフォンに送信し、集計するアプリを開発した。ドライバーの安全管理者は、集計した検査時刻、アルコール検知の有無、端末IDなどのログデータをスマートフォンやPCに取り込んで確認できるようになるため、管理業務の効率向上や遠隔地でのアルコール検査の管理が可能となっている。

発表同日に行われた会見のなかでは、物流トラックやタクシーなどの青(緑)ナンバー(事業用自動車)のドライバーに対しては、現在すでにアルコール検知が義務化されており、各事業所に据え置きタイプなどのアルコール検知器は設置されているほか、社用車での飲酒運転事故を回避する仕組みへの注目が高まっていることもあり、この検知器に対する需要は多いとにらんでいると語られた。

ver.1では、呼気の誤検知や他のガスによる検査すりぬけを防ぐため、水蒸気のみでの検知から3種類のガスセンサによる複合的な認識に変更している

実用化めど、および日立グループ外への販売の有無については未定という。今後の展望について、欧米において自動車を飲酒時に運転できなくなるようなインターロック(条件つき電子錠)を設ける動きがあることを紹介した上で、自動車会社と協力し、インターロック機能の開発も進めていきたいということだ。

呼気アルコール検知器ver.2の概要。専用アプリによる測定を行うもので、実証実験段階ではAndroidアプリのみだが、実用化にあたってはiOS版も開発予定という