IDC Japanは6月12日、国内マネージドプリントサービス(MPS: Managed Print Services)市場の2016年売上実績と、2021年までの予測を発表した。これによると、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR: Compound Annual Growth Rate)は11.3%、2021年市場規模は1033億円を予測している。

2016年の国内MPS市場の売上額は604億4000万円で、前年比9.9%の増加となった。MPSは、企業のオフィス出力環境の現状を分析した上で、最適な出力環境を構築し、その環境を継続的に維持/運用していくアウトソーシングサービス。MPSの導入により、出力環境に関する総保有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)の把握/削減、出力管理業務プロセスの効率化、環境負荷軽減といった効果を期待することができるという。

国内MPS市場 売上額予測、2012年~2021年

同社が調査を開始した2009年以来、国内MPS市場は常に前年比成長率15%前後のペースで成長を続けているが、2016年の実績は昨年のIDCが予測した17.1%を大きく下回る9.9%の成長に留まった。近年、MPSのコモディティ化に伴い、プリント環境改善ニーズの高いユーザー企業への販売が一巡したこと、当初期待されていたMPSをベースとした高度なソリューション提供が進んでおらず、ユーザー企業の高い期待に応えられなかったことなどが、成長鈍化の原因であると推測。

一方、国内IT市場においては、モバイル、クラウド、IoT、AI/認知システムといった新技術を前提とした、ビジネスモデルの変革があらゆる産業分野で起きようとしており、デジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれるこうした動きは、プリント環境にも大きな影響を与える可能性があるという。

このような状況下で、MPSにより得られた顧客との強固な関係を使い、DXを前提とした高い付加価値を持つソリューションの展開を始めたベンダーが登場している。まだMPS市場の売上全体に占める割合は小さいものの、こうした動きが今後、国内MPS市場を再び高い成長に導くことができるのか、同社では注目している。

同社の イメージング、プリンティング&ドキュメントソリューション グループマネージャーである石田英次氏は「2016年、国内MPS市場は成長が鈍化、市場自体が大きな転換点を迎えている。MPSで確立することができる強固な顧客関係を活用し、DXを前提とした高度なソリューション展開が再成長のカギとなる」と分析している。