「ジェンダーとダイバーシティ推進を通じた科学とイノベーションの向上」をメーンテーマに東京都内で開かれていた国際会議「ジェンダーサミット10」は26日夕、「ジェンダー平等は持続可能な社会と人々の幸福に不可欠」「ジェンダーの平等は『国連の持続可能な開発目標(SDGs)』すべての実践に組み込まれることが必要」などとする3項目の提言(「Tokyo Recommendations:BRIDGE」)を発表して閉会した。次回は今回の成果を引き継いで11月にカナダ・モントリオールで開かれる。

写真1 閉会セッションで会議の成果などについてコメントするJSTの渡辺副理事(右端)

写真2 提言を発表して閉会後に記者会見する左から藤井機構長、井野瀬副会長、濵口理事長、渡辺副理事

「ジェンダーサミット10」は、科学技術振興機構(JST)と日本学術会議などが主催して25、26の両日、東京都千代田区の一橋講堂で開催され、23カ国から600人近くが参加した。会議はそれぞれ6つの主要(プレナリー)セッション、パラレル(サブ)セッションで構成された。各セッションでは「男女の(社会・文化的)性差」であるジェンダーの問題をダイバーシティ(多様性)の中に位置付けながら、これからの世界や社会により深く根付かせることの重要性で一致、ジェンダーをめぐるさまざまな課題について熱心な議論が行われた。

2日間にわたる議論の成果は提言「Tokyo Recommendations:BRIDGE」にまとめられた。提言は世界に向けて発表、発信されたため英語で表記された。邦訳は以下の通り。

  1. ジェンダー平等は持続可能な社会と人々の幸福に不可欠な要素であり、科学、技術及びイノベーションが人々の生活をどれくらい良いものにできるか、その質を左右する。それは、男女間の機会均等に加え、ジェンダーの科学的理解とジェンダーの差異が科学技術の主要因と捉えられ分析されてこそ社会にイノベーションをもたらし得る。

  2. ジェンダー平等は17あるSDGsすべての実践に組み込まれることが必要であり、科学技術イノベーションと共に歩むジェンダー平等はSDGsのそれぞれと結びつき、17すべての目標の実現を促す架け橋となる。

  3. SDGsに掲げるジェンダー平等は、社会における多様性、とりわけ、女性や女子、男性や男子、民族や人種、文化等が果たす意味や役割を社会がどのように認識して定義、再定義しているか、その関係性を考慮して進める必要がある。それは、産業界を含むすべての関係者にとって自らが取り組む持続的課題のひとつとすべきである。

「ジェンダーサミット10」は26日午後、6つのパラレルセッションでの議論の内容などが報告された総括セッションが行われた後、次回開催国のカナダを代表してケベック自然科学技術支援機関のマリーズ・ラッセンドさんが「ジェンダーの平等は簡単には実現できない。一歩ずつ着実に進めることが必要だ」などと述べ、今回会議の成果を引き継ぐことを宣言するあいさつをした。最後に提言を発表して閉会した。

閉会後、主催者を代表してJSTの濵口道成理事長、渡辺美代子副理事(JSTダイバーシティ推進室長)が、日本学術会議からは井野瀬久美恵副会長(甲南大学文学部教授)が、また情報・システム研究機構の藤井良一機構長がそれぞれ会議の意義や成果などについて記者会見(プレスセッション)した。この中で濵口理事長と井野瀬副会長はそれぞれ、JSTとしても日本学術会議としても今回の成果を受け、ジェンダーの問題に引き続き積極的に取り組んでいく考えを強調した。

濵口理事長は「アジアの中でも日本はジェンダー問題で立ち遅れていると感じた」と述べ、日本を代表する研究支援機関としてこの問題で立ち遅れている状態を改革していくために積極的に取り組んでいく姿勢を明らかにした。渡辺副理事は提言のタイトルに付いた「BRIDGE」は「Better Research and Innovation through Diversity and Gender Equality(ダイバーシティとジェンダー平等を通してより良いリサーチとイノベーションを)」の単語の頭文字から作りながらも、提言の3項目とも「ジェンダーと科学技術イノベーションをつなぐ」「SDGsをつなぐ」「すべての人つなぐ」「架け橋」の意味を持たせた、と説明した。

また井野瀬副会長は「ジェンダーサミットは(一つの)国際会議にとどまらず、行動していく、次につなげていく会議だ」などと継続的な取り組みの重要性を指摘し、今後も日本学術会議のジェンダー問題が関係する委員会・分科会の場で、今回会議で明らかになった課題を整理しながら日本学術会議としても継続して議論する方針を示した。

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