名古屋大学は、同大学大学院医学系研究科循環器内科学の津田卓眞大学院生、竹藤幹人助教、室原豊明教授らの研究グループが、マックスプランク心臓肺研究所のStefan Offermanns博士と自治医科大学の小谷和彦博士らの研究グループとの共同研究において、Gタンパク質共役受容体のCorticotropin releasing hormone receptor 2(以下、CRHR2)が慢性心不全発症に関与していることを明らかにしたと発表した。この研究成果は5月26日付で、国際医学雑誌「The Journal of Experimental Medicine」に掲載された。

CRHR2が慢性心不全発症に関与(出所:名大ニュースリリース※PDF)s

循環動態の破綻である「心不全」の患者数は増加傾向にあり、人口動態統計(厚生労働省)の疾患別死因では、心疾患による死亡は悪性新生物に次いで第2位と、予後不良の疾患として知られている。循環動態の破綻は、心筋症や弁膜症などの心臓疾患によって生じ、近年は糖尿病・腎不全・高血圧といった生活習慣病や慢性疾患が循環動態破綻の原因になるとして、それを改善する新規治療法の開発が期待されている。

研究グループは、循環動態破綻(心不全)マウスモデルを用いて、マウス遺伝子コード上から推測される600種の全GPCRの心臓における発現量を網羅的に解析したところ、CRHR2が慢性心不全時に有意に上昇していたという。

また、CRHR2アゴニストの循環動態への影響を確かめるため、埋め込み型浸透圧ポンプを用いて、CRHR2アゴニストをマウスに2週間持続投与したところ、投与量依存的に心機能 が低下し、一方で、CRHR2阻害薬をマウス心不全モデル(TAC)に4週間投与したところ、心不全マーカーであるBNP上昇が抑制され、心臓超音波検査上、心収縮力の改善を示したということだ。

さらに、健常者200名と拡張型心筋症患者60名の血液サンプルを採取し、血中CRHR2アゴニスト濃度を測定したところ、心不全は弁膜症、 虚血性心疾患、膠原病など様々な疾患によって引き起こされるため、心不全患者では血中CRHR2 アゴニスト濃度が上昇することも明らかになったとのことだ。

以上のことから、CRHR2が心不全の新規検査法と新規治療薬の開発に貢献することが期待される。この研究では、CRHR2阻害薬はマウス心不全モデルにおいて評価をしているが、今後は臨床応用にむけた創薬研究へ発展させると説明している。