市場動向調査企業の台湾TrendForceの半導体メモリ市場調査部門であるDRAMxXchangeは5月18日、DRAM業界の売上高が、2017年第1四半期に四半期ベースで過去最高を記録したと発表した。
多くのPC OEMが、2016年下期の厳しい供給不足を勘案して、2016年12月には2017年第1四半期の契約交渉を開始したこともあり、PC DRAMモジュールの価格は2016年第4四半期から2017年第1四半期の間に平均契約価格が約30%上昇したという。このPC DRAMの価格急騰の影響は、サーバならびにモバイルDRAMにもおよび、モバイルDRAM製品の平均契約価格は、2017年第1四半期で前四半期比約10%増加したとする。
DRAMeXchangeの調査ディレクターであるAvril Wu氏は、「2017年第1四半期におけるDRAMベンダの売上高は、前四半期比で13.4%の増加となった。 供給側は、早くても今期下半期にならなければ、DRAMの生産能力が増強されないという話をしているようだ。その時期は、新しいスマートフォンやPCの出荷が予定されているためで、それに関連する需要を満たすために生産能力の拡大を果たす必要がある、ということだ」と説明している。
またWu氏は「過熱気味だったモバイルDRAM市場はこの第2四半期に一時的に落ち着いてきているが、サーバDRAM市場はまだ白熱している。 DRAMeXchangeの調べでは、第1四半期の平均価格上昇率は10%を超えており、PCとサーバの両方のDRAM市場で製品価格が再び上昇すると予想している」と付け加えている。
TrendFoeceは各DRAM企業の動向を次のように分析している。韓国Samsung Electronics SK Hynix 米国Micron Technologyだけで世界市場の9割をはるかに超えるシャアを握っており、寡占状態にある。NAND市場には、この3社のほかにも、Western Digital, Intel, 東芝といった大手企業が参戦しており6社による激しい戦いとなっているのとは対照的である。
2017年第1四半期における世界のDRAMベンダの売上高ランキング (2016年第4四半期の為替レートは、1ドル=1.158ウオン=31.78NTドル、2017年第1四半期の為替レートは1ドル=1.150ウオン=31.02NTドル) (出所:TrendForce 2017.5.) |
韓国勢だけでDRAM市場の7割超のシェアを獲得
DRAM市場は、Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technologyの大手3社だけで、世界市場の9割を超すシェアを有しており、寡占状態にある。中でもSamsungは、第1四半期のDRAM売上高トップであり、前四半期比で売上高を6.8%増加させている。ただし、同社は2016年第4四半期に2桁成長を達成したこともあり、成長率の点では鈍化傾向となり、2016年第3半期に5割を超えていたシェアも44.8%まで下げている。とはいえ、2017年第1四半期のDRAM売上高は63億ドルに達し、第2位のSK Hynixの40億ドルを大きく上回っており、市場での高価格維持をねらって、無理に増産しない方針を掲げている模様であることがうかがえる。
2位のSK Hynixは売上高を前四半期比で21.5%増とし、DRAM市場シェアの28.7%を占めた。SamsungとSK Hynixの韓国勢2社だけで世界市場の7割のシェアを獲得している傾向にここしばらく変化はない。とはいえ、3位のMicronも業績を伸ばしており、市場シェアも前四半期の19.4%から21.0%と2割台へと乗せてきた。
トップ3の中でも営業利益率がもっとも高かったのはSamsungで54%。SK Hynixも前四半期の36%から47%へと上げてきているほか、Micronも前四半期の14.9%から32.5%へと倍増を達成。DRAM製品の価格上昇が継続すれば、第2四半期の利益増加も見込めるという。
また、技術面では、Samsungが18nmプロセスへの円滑な移行を目指した取り組みを進めており、これにより生産量を確保、競合他社よりも優位なポジションを維持することを目指している。すでにライン17と呼ばれているファブに18nmプロセスを導入しているほか、同技術をライン15のファブへの適用も計画しており、2017年末までに、18nmプロセス採用DRAMの生産量を総DRAMビット数量の40%以上にすることを目指している。
対するSK Hynixのは、21nm製品の歩留まりと生産高を引き続き引き上げることが主題となっている模様だ。とはいえ、2017年下半期に18nmプロセスでパイロット生産を開始する予定としており、2018年前半には18nmの量産プロセス技術を確立したいとしている。
そしてMicronの子会社であるMicron Memory Taiwanは、2017年の初めに17nmプロセスの量産段階に到達。2017年末までにほとんどのDRAM生産に17nmプロセスを採用する計画予定である。また、Micronの完全子会社となったInoteraは、現状、さらなる微細化計画はなく、代わりに20nmプロセスの歩留まり向上に注力する予定だという。
なお、台湾のDRAMサプライヤの状況はというと、Nanyaの第1四半期売上高は特殊用途のDRAM製品の価格上昇により、前四半期比で3.6%増加。20nmプロセスによるDRAM試作の第一バッチの歩留まりが予想以上に高かったことを受け、20nmプロセスの生産予定を加速させており、2017年末にかけて20nmの生産容量を月産3万枚に拡大する予定だという。また、Winbondの売上高は前四半期比で5.5%減となった。これは、ウェハ生産能力の一部を、第1四半期中にNORの需要増加を受けてDRAMからシフトさせたためであるという。DRAMとしては、46nm品の比率を増やすのに加えて、第3四半期から38nm製品の量産を始めることを公表している。同社の今後の業績は38nmの立ち上がり状況に大きく依存しそうである。