物質・材料研究機構(NIMS)は、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)メソスケール物質化学グループ主任研究員Joel HENZIE氏、早稲田大学大学院先進理工学研究科ナノ理工学専攻Bo JIANG氏、MANAメソスケール物質化学グループ山内悠輔グループリーダー(早稲田大学・客員教授、オーストラリアWollongong大学・教授)らの研究グループが、国内外の研究機関との国際共同研究において、高分子を鋳型として活用することで、均一で規則的なナノ空間を持つロジウムナノ多孔体(メソポーラスロジウム)の開発に成功したことを発表した。この研究成果は5月19日、英国科学雑誌「Nature Communications」 オンライン版に掲載された。
体積に比べ表面積の大きいナノ多孔体は、新たな化学反応の場をもつ材料として期待されている。触媒材料および吸着材料等へ向け、有機金属錯体(または多孔性配位高分子)、メソポーラスシリカ、ゼオライトなど、さまざまな多孔体が報告されているが、特に金属骨格を有するナノ多孔体は、多方面への応用展開が期待できるという。
ロジウムは、ほかの金属と比較しても顕著な一酸化窒素(NO)還元活性を有し、自動車排ガス浄化用触媒などに用いられるなど、産業上重要な元素であるが、希少で高価なため、いかに少量のロジウムで最大限の効果を引き出せるかが研究のカギになっているということだ。
この研究では、疎水性と親水性の性質をあわせ持つ高分子(両親媒性ブロックコポリマー)の希薄溶液中で濃度を調整することで、均一なサイズの球状ミセル(分子集合体)を形成させたという。これらを鋳型として用いて、精密な条件下でロジウムイオンを化学還元させた結果、ミセルのサイズに応じたナノ細孔を有するロジウム粒子の形成に成功したという。
メソポーラスロジウムは市販のロジウム触媒と比べても抜群のNO還元活性を有し、またメタノール酸化反応などにおいても高い電極触媒活性を示したという。このように、金属にナノ空間を形成して活性を向上させるという指針は、これまでの触媒設計の概念にはなく、今後さまざまな方面で注目されることが期待できると説明している。