政府は遺伝資源の公平、公正な国際取引ルールを定めた「名古屋議定書」を批准することを19日の閣議で決定し、22日に批准手続きを行った。日本は8月20日から同議定書の締約国となり、国内の研究機関や企業は日本の指針や資源提供国の国内制度に基づいた手続きが求められる。

図 名古屋議定書の仕組み(環境省関連資料「名古屋議定書の概要」から/環境省提供)

写真 日本への提供がメキシコに承認されたハヤトウリ(新野孝男氏撮影/筑波大学・農研機構・JST・JICA提供)

名古屋議定書は、発展途上国などで得られる生物の遺伝子を利用して開発された製品による利益を途上国にも適切に分配することを目的としている。1992年に採択された生物多様性条約に基づいている。2010年に名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議で採択され、14年に発効した。既に100近い国と地域が批准したが、日本は11年5月に署名したものの、国内制度整備に関する関係各省間の調整に時間がかかったことなどから批准が遅れていた。

植物や微生物など多様な生物が作る遺伝資源は医薬品などの製品の開発につながるほか学術研究の対象になる。しかし、こうした資源を提供する国に利益配分されないケース(バイオパイラシー)が多いことから途上国を中心とする提供国の要請を受ける形で名古屋議定書ができた。議定書には、遺伝資源を入手した企業や研究機関がルールに違反した不正利用していないか資源提供国が点検できる規定も盛り込まれている。

筑波大学と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、科学技術振興機構(JST)、国際協力機構(JICA)は3月9日、中米原産のウリの一種「ハヤトウリ」を使った農産物研究のためにメキシコの研究者と契約を交わして承認を受けた上で遺伝資源の提供を受けたと発表した。名古屋議定書批准に先立って議定書のルールに沿った手続きだった。同大学などは研究成果をメキシコの農村社会に還元する、としている。

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