国立極地研究所(極地研)などは5月19日、3年間にわたるオーロラの連続高速撮像によって、これまで観測されたなかで最速のオーロラの明滅現象を発見し、その発生メカニズムを明らかにしたと発表した。
同成果は、東京大学大学院理学系研究科の博士課程 福田陽子氏(論文執筆当時、現在は国立極地研究所特別共同利用研究員)、国立極地研究所 片岡龍峰准教授を中心とする東京大学、名古屋大学、京都大学などの研究グループによるもので、5月13日付けの国際科学誌「Geophysical Research Letters」に掲載された。
レイクアップと呼ばれるオーロラの爆発現象が起こると、オーロラのカーテンの一部で明るさや動きが非常に激しく変化する「フリッカリング」という現象が見られることがある。このフリッカリングオーロラは、酸素イオンのサイクロトロン振動数に相当する1/10秒前後の周期で明滅していることが報告されている。
今回の研究では、さらに高速の明滅を検出するため、水素イオンに対応して発生する明滅も観測できるよう、シャッター速度1/160秒のカメラを用いて、冬季の約4カ月間の連続観測を、2014年から3年間にわたってアラスカで実施。この結果、酸素イオンによる1/10秒周期の明滅と同時に、1/50秒周期の明滅や、1/80秒周期という高速の明滅を発見した。
1/80秒という高速の明滅は、酸素イオンでは説明できず、水素イオンの寄与を示唆するものであるという。また、この高速の明滅は、典型的な1/10秒周期の明滅と同時に観測されたことから、フリッカリングオーロラを引き起こす原因は、酸素と水素の両イオンの影響を受けた電磁イオンサイクロトロン波であると考えられる。
同研究グループは今回の成果について、オーロラの発生要因である電子とプラズマ波動の相互作用についての理解に貢献することが期待されると説明している。また、今後さらに高速で記録していく必要があることがわかったため、現在、同研究グループでは、毎秒320フレームでの連続観測を実施しているという。