市場動向調査会社である台湾TrendForceは5月15日、2017年第1四半期の世界におけるファブレス半導体企業の売上高ランキング・トップ10を発表した。これによると、米国企業が6社、台湾が3社、ドイツが1社という構成になっているほか、ネットワーク機器、データセンター、サービス、車載エレクトロニクスなどの応用分野で半導体の売り上げが伸びた結果、Novatek Microelectronicsを除いた9社がプラス成長を達成している。

これまで長年にわたってファブレス企業のトップに君臨してきたQualcommを抜き去りトップに立ったのはBroadcom。これは、旧Avago Technologiesが旧Broadcomを買収した効果で、すでに2016年第4四半期の時点で同社はQualcommを抜き、ファブレストップに躍り出ていた。成長著しいネットワーク向け事業に強いBroadcomが、成長が鈍化したモバイル通信に強いQualcommを抜き去ったといえる。

一方、2位へと転落したQualcommも、スマートフォン(スマホ)市場そのものが低成長であったものの、ネットワークインフラ機器向けのチップも提供していることもあり、前年同期比で10.2%の2桁成長を達成している。ちなみに、TrendForceの調査におけるQualcommの売り上げにはライセンス事業の金額は含まれておらず、純粋なファブレス半導体の売り上げとされている。

トップ10の中で最も伸びが大きかった企業は3位のNVIDIAで、その成長率は同60.3%増と驚異的な伸びで、これにより、これまで3位の地位を守ってきたMediaTekを追い抜くこととなった。従来、PC向けGPUなどが主流であったが、最近はデータセンター向けGPUが伸びているほか、ディープラーニング分野での採用が激増しており、結果として高い成長率を達成することとなった。

台湾トップのファブレス企業であるMediaTekだが、同社もQualcomm同様、スマホ市場の飽和により成長が鈍化しており、その成長率は同0.3%増と、ほぼ横ばいにとどまった。その大きな要因の1つとして、TSMCの10nmプロセスを採用した2.5GHz駆動のデュアルコアCortex-A73を使ったハイエンドスマホ向けアプリケーションプロセッサ「Helio X30」がまだ主要なスマホメーカーに受け入れられていないことが挙げられるという。ちなみに、Qualcommの10nmプロセスSoC「Snapdragon 835」は、多くのスマホに搭載が予定されているため、ハイエンドスマホの分野でMediaTekとQualcommの差が広がるだろうと、TrendForceでは予測している。

なお、全体的にファブレス企業は売り上げを健全な形で伸ばしており、第2四半期には、多くの企業の業績が史上最高値を出す可能性があるとTrendForceでは見ている。

2017年第1四半期のファブレス半導体企業ランキングトップ10。表の左から、順位、会社名、2017年第1四半期売上高(単位:百万ドル)、2016年第1四半期売上高(単位:百万ドル)、2017年第1四半期の前年同期比売上高増減率(%) (注:NVIDIAの売上高にはOEMビジナスやIPライセンスからの収入は含まれていない。また、Qualcommの売上高にはCDMA技術による売り上げは含まれるが、技術ライセンスなどほかの収入は含まれていない。ドルと台湾ドルの交換レートは1:31となっている) (出所:TrendForce)