大気に浮遊する微粒子(エアロゾル)のうち黒色の酸化鉄の粒子が太陽光を吸収して大気を加熱することが分かった、と東京大学や気象庁気象研究所の研究グループが16日発表した。この黒色酸化鉄粒子は自動車などから排出されているとみられ、新たな地球温暖化物質として気温上昇や水循環に影響している可能性があるという。研究成果は同日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。
東京大学大学院理学系研究科の茂木信宏(もてき のぶひろ)助教、気象研究所の足立光司(あだち こうじ)主任研究官、国立極地研究所の近藤豊(こんどう ゆたか)特任教授らの研究グループによると、大気中に浮遊する黒色酸化鉄粒子は自動車のエンジンやブレーキの高温部分や、製鉄の工程など人為的にも発生すると、これまでの研究から考えられている。
研究グループは、航空機に独自の分析装置を搭載して東アジア上空の対流圏大気の観測を実施した。その結果、600から2,100ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の黒色酸化鉄粒子が大気中に高い濃度で含まれていることが分かった。この粒子は大気中や雪氷表面で太陽光を吸収して加熱するために粒子量が増加すると温暖化の一因になるだけでなく、対流圏を不均一に加熱することから雲の量や降水量などにも影響するという。
これまでの研究から温暖化や水循環変化の一因となる人為起源の黒い粒子として化石燃料燃焼時などに放出される炭素性粒子が知られていた。今回の研究成果から茂木助教らは、人為起源の黒色酸化鉄粒子が産業革命以降増加して平均気温や水循環の変化に影響している可能性がある、としている。このため、まだ未解明なことが多い気候変動現象研究に新たな知見を与えることが期待できるという。
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