センサネットワークのように、機械と機械が相互に情報をやりとりする「M2M」(Machine-to-Machine)や、今さまざまな業界から熱い視線を集めているモノがインターネットに繋がる世界「IoT」。今回の2017 Japan IT Week春の会場内にも、たくさんの企業がサービスやソリューションが展示されていたが、そんななかで筆者が興味を惹かれたのはNECブースだ。

数多くの来場者で賑わいを見せていたNECブース

NECは、近い将来確実に訪れるであろう社会構造の劇的な変革や新しいビジネスモデルを創出する「デジタル産業革命」の“さらに10年先の未来”を見据え、「NEC the WISE」に代表される先端AI技術群とともにユニークかつ実用的なIoTソリューションを研究・世に輩出している。今回筆者が興味を惹かれたのは、新しいコンピューティングスタイルを実現する「ヒアラブルデバイス向けWeb API群」だ。ハンズフリー通話を実現するデバイスのように、歩数や姿勢、地磁気を測位するセンサーやマイク、スピーカーを搭載したイヤホン型端末「ヒアラブルデバイス」で実現しようとしているのは、個人認証や屋内での位置測位。

NECブース内のヒアラブルソリューションコーナー。ここでは、実際にイヤホン型ヒアラブルデバイスによる認証を体験することができた

カナル型のイヤホン、といった雰囲気のヒアラブルデバイス

まず個人認証の仕組みなのだが、耳の穴からの反響音特性で個人を特定するというもの。瞬時に、そして安定的に高い精度での認証が行えるという特徴を活かし、例えばイベント会場での入場認証などでの利用が想定されているという。

一方の屋内での位置測位は、サーベイ(実地踏査)した地磁気情報をAI(ディープラーニング)で学習、分析させることによって精度の高い位置情報の推定を実現するというもの。現在実証実験中ではあるが、2m精度での位置測位を可能にしている。特徴的なのは「装着者がどの方向に進んでいるか」も推定できるため、的確な歩行者ナビゲーションを行うことが可能になるのではないだろうか。

NECが提唱するヒアラブルデバイスの活用例

実際にNEC社内で地磁気による屋内位置測位サーベイの様子。建物の構造によっては高い精度が望めないものもあるという

説明員によればこのヒアラブルデバイス、耳に装着するだけなので両手が自由になるという特性を活かし、物流の現場で存分に価値を発揮できるのではないか、とのこと。例えば、屋内での位置測位情報と音声での屋内ナビゲーション・作業指示で、物流倉庫内での作業効率化や、既にYoutubeのNECチャンネルで公開されている「耳元で繋がるインターネット。ヒアラブルデバイス向け耳音響認証技術」のようなパーソナルアシスタントとしての利活用などビジネス・コンシューマを問わない価値を提供してくれることだろう。

NECブースでは、他にも面白い取り組みが展示されていた。「生体情報IoT基盤」と題されたコーナーでは、今後その重要性がますます高まっていくと想像されるライフケア・ヘルスケア領域でのサービス創造を実現するため、デバイスはもちろん、クラウドやAIといった技術プラットフォームを統合的なシステムとして提供してくれる。

ウェアラブルデバイスに搭載された各種センサーから収集した周辺環境、生体情報をもとに、AIによる分析を組み合わせることで熱中症に陥らないよう適宜水分補給を促すアラートを発するといったことも可能になるのではとのこと。他にも、AIのアルゴリズムによっては例えば重大事故を回避するために長距離バスドライバーの状況を推定しリスクを未然に回避することも可能になるのでは。そう考えると、これらのテクノロジーを活用したデバイスのいち早い実用化に期待を寄せてしまうのは筆者だけではないはず。

参考出展ではあったが、生体情報を用いたデバイスの提案も

こちらは、リストバンドのように手首で生体情報を収集するデバイス。バッテリーの進化が進めばさらなる小型化や他のセンサーを搭載することも可能になるとか

デモンストレーションではスマホ上で心拍や気温、湿度に呼吸といった情報が可視化されていた

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの導入実績もあり、世界でも最高峰の精度を誇る顔認証ソリューション「NeoFace」ファミリーのひとつとして「顔跡/KAOATO」にも興味を惹かれた。カメラの映像から特定の人物を高速かつ高精度で検出する「顔跡/KAOATO」だが、既にドラッグストアや書店といった小売事業者が頭を悩ませる経営課題解決の一助になっているそう。「特定の人物を検出する」という仕組みを使い、万引き防止や常習犯対策といった防犯面での活用においても成果を上げているそうだ。

顔認証ソリューション「顔跡/KAOATO」

デモンストレーションでは説明員をブラックリスト登録しておき、認識した時点でご覧のようにアラートを発していた。ちなみに、顔を撮影するカメラ自体はVGA以上のものかつネットワークカメラであればOKとのこと

“さらに10年先の未来”を見据えICT技術の研鑽に邁進するNEC。今後どのようなテクノロジーで驚かせてくれるのか、その片鱗をまたJapan IT Weekで見せてくれることに期待したい。