岡山大学は、同大学大学院 自然科学研究科の坂本浩隆准教授と近畿大学、岡山理科大学の研究グループが、モグラの近縁種である真無盲腸類のスンクスとげっ歯類のハツカネズミを比較して、オスの性機能を調節する脊髄神経回路が哺乳類で普遍的であることを明らかにしたと発表した。こ本研究成果は5月1日、米国の科学雑誌「The Journal of Comparative Neurology」に掲載された。
オスの性機能を司る神経ネットワークは、脳と脊髄の多くの部位から構成される。同研究グループは、ラットやハツカネズミといったげっ歯類において、脊髄(腰髄)に存在するガストリン放出ペプチド(GRP)系がオス優位な神経回路を構築し、勃起や射精などのオスの性機能を調節することを報告していた。
オスの性機能専用の神経回路は、男性ホルモンであるアンドロゲンの受容体を発現しており、男性ホルモンによりその発現が制御される。一方、ヒトの脊髄損傷でも男性の性機能が障害されることが知られており、げっ歯類以外の哺乳類においても脊髄にはオスの性機能に重要な神経回路が存在すると考えられていたが、オスの性機能専用神経回路が哺乳類に普遍的に存在するかは不明であった。
そこで研究グループは、比較的原始的な哺乳類と考えられておりモグラの近縁種である真無盲腸類のスンクスとげっ歯類のハツカネズミで、オスの性機能専用神経回路を同定・比較したところ、スンクスの脊髄においてもハツカネズミ同様、オスの性機能専用神経回路が存在することがわかったという。また、スンクスにおいてもオスの性機能専用回路にアンドロゲン受容体が発現していたことから、男性ホルモンによる調節機構の存在も示唆されたという。
これらのことから、ペニス反射と勃起を司る神経回路メカニズムが哺乳類で共通である可能性が示唆された。ヒトを含む霊長類や家畜での解析が必要ではあるものの、今後はヒトにおける勃起不全の治療や畜産動物の繁殖、哺乳類における生殖・性行動の生理メカニズムの解明に結びつくことが期待されるとしている。