糖尿病(2型糖尿病)の発症には脂肪酸のバランス変化とその変化を調整する酵素が関わっていることを筑波大学の研究グループが明らかにした。この酵素の働きを抑えて脂肪酸バランスを制御することにより糖尿病の予防や治療に役立つ可能性があるという。研究成果はこのほど米科学誌に掲載された。

画像 左は正常マウス、中央は糖尿病モデルマウス、右は酵素(Elovl6)欠損糖尿病モデルマウスの膵臓組織。欠損マウスは緑色のβ細胞が増殖している(提供・筑波大学/同大学研究グループ)

図 酵素(Elovl6)が関与する脂肪酸バランス変化が糖尿病を引き起こす仕組み(提供・筑波大学/同大学研究グループ)

糖尿病の大部分は2型で、適切な食事や運動などにより予防可能な生活習慣病でもある。研究グループによると、2型の発症と進行には肥満などにより、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」と膵臓(すいぞう)でインスリンを合成、分泌するβ細胞の機能不全が関与すると考えられているが詳しいことは分かっていない。また、肥満に伴う脂肪酸代謝の異常や内臓での脂肪酸蓄積が糖尿病を引き起こすことは知られていたが、関与する脂肪酸の種類や組成などと発症との関係は未解明だった。

筑波大学医学医療系の島野仁(しまの ひとし)教授、松坂賢(まつざか たかし)准教授らの研究グループは、パルミチン酸といった炭素数16の脂肪酸から、ステアリン酸、オレイン酸といった炭素数18の脂肪酸を合成する際に、またこれら脂肪酸のバランス変化に、それぞれ重要な役割を果たす酵素(Elovl6)に着目した。そしてこの酵素ができない糖尿病2型モデルマウスを作って実験した。

その結果、このモデルマウスではβ細胞が増殖し、インスリン分泌量も増えて血糖値も低下していた。またパルミチン酸により引き起こされるβ細胞の炎症なども抑えられていた。これらのことから研究グループは、この酵素の働きを阻害することによりインスリン分泌を減らすオレイン酸の過剰蓄積を抑制、パルミチン酸がもたらす悪影響も軽減して糖尿病を予防、改善につながる可能性がある、としている。

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