東北大学は、同大学大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の黒石智誠助教と菅原俊二教授らのグループが、ニッケルアレルギーの発症に関わるニッケル結合タンパク質はケモカインの1種である「CXCL4」であることを発見したと発表した。この成果は4月22日、英国アレルギー臨床免疫学会誌「Clinical & Experimental Allergy」電子版に掲載された。
身の回りにある金属製品から溶出した金属イオンは、生体内に侵入すると金属アレルギーを引き起こし、接触性皮膚炎などのアレルギー症状を引き起こすことが知られている。さまざまな金属のうち、ニッケルは抗原性検査における陽性率の高さなどから最も重要視されている。生体内に侵入したニッケルイオンは、何らかの自己分子に結合することにより免疫システムに認識されるハプテンの一種であると考えられているが、そのパートナー分子などの詳細は明らかになっていなかった。
そこで、同研究グループが開発したニッケルアレルギーマウスモデルを用いて、細菌の菌体成分の一種であるリポ多糖注とニッケルイオンの混合溶液をマウスに注射することによりニッケルに対する免疫応答を誘導し(感作相)、マウスの耳にニッケル溶液を注射することにより引き起こされる耳の腫れを指標としてニッケルアレルギーの程度を測定する(惹起相)。これまでの研究から、リポ多糖がニッケルアレルギーを増強することが明らかになっていたため、このリポ多糖を注射したマウスの血清についてニッケル アレルギー増強活性を調べたという。
その結果、単独では耳の腫れを引き起こすことの無い低濃度のニッケル溶液であっても、上記の血清と混合することにより、耳の腫れを誘導することが判明。そこで、「耳の腫れを誘導する活性」を指標として血清中のタンパク質を精製したところ、ニッケル結合タンパク質を含む画分にこの活性が含まれることが判明したという。
この画分に特異的に含まれるタンパク質を質量分析法により解析した結果、ケモカインの一種である「CXCL4」であることが判明したほか、遺伝子組換えCXCL4を用いた解析から、CXCL4はニッケルアレルギーの惹起相だけではなく、感作相も増強することが明らかになったということだ。
なお、CXCL4は60年以上前に発見されたタンパク質であるが、これまで金属アレルギーとの関連性は知られておらず、ニッケルイオンとの結合性やニッケルアレルギー増強活性の報告は同研究が世界で初めてだという。これは、ニッケルアレルギーひいては金属アレルギーの発症メカニズムを解明する重要な基礎研究であり、CXCL4を用いたニッケルアレルギーの予防や治療法開発への応用が期待されるとしている。