東北大学は4月27日、 静的にも動的にも真にランダムな偏光状態にある単一光子の発生をダイヤモンドを用いて実現したと発表した。

同成果は、東北大学電気通信研究所・枝松圭一教授、阿部尚文研究員らの研究グループによるもので、4月26日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

単一光子は、量子コンピュータや量子暗号などの次世代情報通信技術として期待されている量子情報通信技術において特に重要な役割を有する。量子情報通信における情報の基本単位である量子ビットは、単一光子の偏光を用いて実現されており、従来は純粋状態と呼ばれる特定の偏光をもつ状態のみが主に利用されてきた。

一方、個々の光子の偏光がまったくランダムで特定の偏光をもたない、すなわち静的にも動的にも「無偏光」な状態にある単一光子は、物理的な真性乱数の発生や量子暗号通信への応用、量子測定などの量子力学の基礎問題の検証において有用であると期待されている。しかし、そのような静的かつ動的な無偏光性を示す単一光子の発生はこれまで確認されていなかった。

今回、同研究グループは、結晶面を工夫したダイヤモンドを用いて、同ダイヤモンド中の不純物欠陥である窒素-空孔中心(NV中心)から発生する単一光子が、静的にも動的にもほぼ完全なランダム性をもつ無偏光状態にあることを検証することに成功した。

同研究グループは今後、今回実現した無偏光単一光子を用いて、量子測定における不確定性関係などの量子力学の基礎問題の検証実験や、量子暗号などに用いられる物理的な真性乱数発生装置への応用などに取り組んでいきたいとしている。

ダイヤモンド中の不純物欠陥(NV中心)を用いた無偏光単一光子発生の概念図 (出所:東北大学Webサイト)