理化学研究所(理研)は4月26日、アルミニウム薄膜で作った「メタマテリアル」で可視光全域をカバーする色を作り出すことに成功したと発表した。
同成果は、理研田中メタマテリアル研究室 田中拓男主任研究員、レニルクマール・ムダチャディ国際特別研究員らの研究グループによるもので、4月26日付の英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
メタマテリアルとは、光の波長よりも小さいナノメートルサイズのナノ構造体を大量に集積化することにより光学特性を人工的に操作した物質で、自然界に存在する物質では実現できない光学特性を持っている。しかし、従来のメタマテリアルでは、吸収する光の波長がひとつに限定されていたり、吸収する光の波長幅が広いためパステルカラーのような彩度の低い色しか作り出せないといった課題があった。
今回、同研究グループは、電子ビームリソグラフィー法と真空蒸着法を用いて、シリコン基板上に厚さ150nmのポリメチルメタクリレート(PMMA)レジスト材料を塗布し、PMMA上に四角形パターンを描画後、その四角形上とそれ以外の部分に厚さ45nmのアルミニウム薄膜を塗布したメタマテリアルを作成した。
同メタマテリアルは、座布団形状のナノ構造を持っており、これにより赤色から紫色まで可視光全域をカバーするさまざまな色を作り出すことに成功した。さらに、異なる色を出す構造を混ぜることにより、黒色を作り出すこともできたという。
今回開発されたメタマテリアルで作製したカラーチャート(左)アルミニウム薄膜を塗布する前の光学顕微鏡写真 (右)アルミニウム薄膜の塗布後。長波長の赤色から短波長の紫色まで、さまざまな色が再現できた。ひとつの色は、1種類のナノ構造、すなわち四角形の1辺の長さと間隔の組合せでできている (画像提供:理化学研究所) |
同メタマテリアルの表面は、比較的安定な酸化皮膜を持つアルミニウムで覆われているため、ナノ構造が破壊されない限り、半永久的に退色することはない。また、インクなどの塗料と比較すると、はるかに薄くて軽いという特徴もある。同研究グループは、高解像度ディスプレイやカメラのカラーフィルターとしての利用、光の散乱を避けたい光学機器の内壁、大型望遠鏡内の黒色塗装などの応用が期待できるとしている。