クラウド移行における課題とは?
ヴイエムウェアはこのほど、同社のCross Cloud戦略を担当するCTO(最高技術責任者)であるGuido Appenzeller氏が来日することに伴い、説明会を開催した。同氏は、クラウド移行に伴う課題とそれを解決する同社の戦略やソリューションについて説明した。
Appenzeller氏は、1970年代から現在にかけて、メインフレームからPCへ、また、PCからクラウドへと2回の革命が起きており、今はまさに2回目の革命が起きているところだと述べた。
同社の顧客を対象にした調査によると、「60%の顧客がパブリッククラウドを利用している」「48%がAWSとMicrosoft Azureを利用している」「67%が最終的に複数のクラウドを利用したい」と回答しており、複数のパブリッククラウドを利用する企業が増加しているという。
Appenzeller氏は、こうして企業のクラウド利用が進む中、クラウドに移行するにあたり3つの課題があると指摘した。
まず、第1ステップのオンプレミスからプライベートクラウドへの移行においては、「サイロ化されたITチームからクラウド組織への変革」が課題となる。
プライベートクラウドを構築するにあたっては、仮想インフラに加えて、そのための管理や運用レイヤも必要になる。クラウドを管理するにあたっては、「自動化」「運用」「コスト管理」といった機能が求められる。
さらに、Appenzeller氏は、ネットワークをパブリッククラウドに拡張する必要性があるとした。
第2ステップのプライベートクラウドからハイブリッドクラウドへの移行においては、クラウド間で一貫したポリシーとプラットフォームが課題となる。いわゆる、セキュリティやコンプライアンスの問題だ。
同社はこの課題の解決策として、VMware vCloud Air Network(vCAN)を用意している。vCANは、同社のテクノロジーをベースにしたクラウドサービスで、セキュリティおよびコンプライアンスが確保されている。vCANのプロバイダーはグローバルで4000社に上り、100カ国で提供されている。
国内の代表的なvCANパートナーには、IIJ、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティ、日本IBM、富士通などがいる。昨年11月には、ハイブリッド クラウド戦略の推進に向け、この6社らと協力を強化することを発表している。
Appenzeller氏は、パートナーと提供するクラウドサービスの例として「VMware Cloud on AWS」を紹介した。同サービスの提供は昨年10月に発表され、仮想化ベンダーのトップを走る同社とパブリッククラウドベンダーのトップであるAmazon Web Services(AWS)の協業ということで、業界を驚かせた。
「VMware Cloud on AWS」は、AWSのパブリック クラウド上でVMwareのSDDC(Software-Defined Data Center)のすべての機能を使えるものとなる。例えば、同サービスを使うことで、VMware vSphereをベースにしたプライベート/パブリック/ハイブリッドクラウドの統合環境でアプリケーションを稼働させることが可能になる。サービスの提供、運用、販売、サポートはすべてVMwareが行う。
Appenzeller氏はAWSと提携した理由について、「顧客がオンプレミス上のアプリケーションをAWSに移動してネイティブに使うことを望んでいる。これは、OSが異なる、冗長性のj仕組みが使えない、ロードバランサーが走らない、ハイアベイラビリティがうまくいかないなどの理由から、難しい。その点、VMware Cloud on AWSを使えば、シンプルかつ簡単に、アプリケーションをパブリッククラウドに移行することができる」と説明した。
第3のステップのハイブリッドクラウドからネイティブのパブリッククラウドへの移行における課題は「開発者のスキルセットの変革」となる。
Appenzeller氏は「ネイティブのパブリッククラウドにおいては、コンテナやマイクロサービスをベースとしたアプリケーションを考えていかなければならないが、開発者のマインドセットを急速に変革するのは難しい」と話す。
こうしたクラウドへの移行にまつわる課題の解決に向けて、同社はマルチクラウド管理サービス「Cross-Cloud Services」を提供する。同サービスは、複数のクラウドにわたる使用状況と使用率の可視化、ネットワーク情報の可視化、複数のクラウドの課金とコストの効率的な管理、複数のクラウドにまたがるプライベートネットワークの構築、マイクロセグメンテーションによるセキュアなネットワークの構築などを実現する。
ちなみに、4月12日には、「Cross-Cloud Services」の提供に向けて、メトリクス監視サービスを提供するWavefrontを買収する意向であることを発表している。
Appenzeller氏によると、「Cross-Cloud Services」にWavefrontのサービスを統合していくという。