核融合発電の実現を目指す自然科学研究機構核融合科学研究所(岐阜県土岐市)の大型ヘリカル装置(LHD)が1億度を超えるイオン温度を達成した、と同研究所が21日に発表した。同研究所は実用化に必要とされる1億2千万度に近づく成果としている。
同研究所のLHDは高さ約9メートル、直径約13.5メートルの金属製の大型実験装置。水素や重水素、三重水素(トリチウム)などの軽い原子をつくる原子核と電子が超高温環境で自由に空間を飛び回る「プラズマ」状態の中で原子核同士が衝突して別の重い原子核になるのが核融合。その際に生じるエネルギーを利用するのが核融合発電だ。
同研究所のLHDで重水素を使った実験は3月7日に開始された。同じ装置で2013年に軽水素を用いた実験で9,400万度を達成していたが、重水素を使うとより高温状態を作り出せる。しかし重水素を使うと放射性物質や中性子が生じるため装置がある地元の反対が強く、当初計画の2000年過ぎの重水素実験開始が大幅に延びていた。同研究所が安全管理計画書をつくって説明会を何度も開くなどして地元の基本的な同意を得て今回の重水素実験が実現したという。
核融合発電炉のタイプには発電に必要な磁場の閉じ込め方式によっていくつかの型があり、同研究所のLHDは装置内の真空容器にねじれたドーナツ形をした超電導コイルがあるヘリカル型。日本や欧州、ロシアなどが国際協力でフランスに建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)や量子科学技術研究開発機構 核融合エネルギー研究開発部門 那珂核融合研究所にあるJT60などは真空容器が輪型のトカマク型。
同研究所は、放射線障害防止法に基づいたコンクリートしゃへい壁の検査を実施し、重水素使用開始後のしゃへい性能も合わせて確認した、としている。
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