NTTデータと東京海上日動火災保険(東京海上日動)は4月24日、2016年12月から実施していた保険証券へのブロックチェーン技術適用に向けた実証実験を完了したと発表した。なお、ブロックチェーンを利用した保険証券のデータ化の実証実験を完了した事例としては、国内初だという。
輸出入貨物にかかわる保険である外航貨物海上保険は、保険証券が売り手から買い手に譲渡されるため、保険証券は国をまたいで譲渡が行われ、銀行などの貿易関係者を介して国際的に流通する。しかしながら、紙書類によるものが中心であり、貨物の買い手への到着に時間を要するとともに、紛失リスクがあることなども課題になっているという。
ブロックチェーンはデータの耐改ざん性を確保した状態でネットワーク参加者間での情報共有が可能な分散ネットワーク技術であり、両社は2016年12月から2017年3月の期間で、外航貨物海上保険における保険証券の領域へのブロックチェーン技術適用に向けた共同実証実験を行った。
実験では、外航貨物海上保険の保険証券についてブロックチェーンによるデータ化し、関係者の適切なアクセス性能、業務効率性、セキュリティ性能等の観点から実運用を想定した検証ならびに、これに伴う人的コストや書類の送達コスト等の削減効果について検証。
また、保険証券のデータ化にあたり、同じくブロックチェーン上にあるL/C(信用状)やInvoice(商業送り状)、B/L(船荷証券)の情報を取り込み、これをブロックチェーン上の保険証券に反映することで、他の貿易関係書類との連関性についても検証した。
結果として、実際のブロックチェーン上において、関係者の適切なアクセス性能、業務効率性、セキュリティー性能について各種の検証を行い、いずれも当初の仮説を実証することに成功。また、各種のコスト削減効果についても測定をすることができ、当初の目的を達成した。
また、L/C、Invoice、B/Lをブロックチェーン上で取り扱った結果、保険証券のみならず貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有用性を確認できたほか、貿易業務全体がブロックチェーンにより電子化された場合には、貿易関係者の業務効率が向上した。到着港における貨物の引き取りが促進されることから、保険会社の算定する港湾における貨物集積リスクが減少し、危険負担コストの減少につながることも確認した。
今回の実証実験を通して、保険証券のみならず貿易業務全体へブロックチェーン技術を適用することの有効性が確認され、実用化に向けては貿易関係者が協調して課題解決を進めるグローバルな枠組みを作ることの必要性が認識されたという。
NTTデータは実用化に向けた課題解決のために、国内外における幅広い貿易関係者が参加可能な業態横断のコンソーシアムを企画、検討している。一方、東京海上日動は貿易業務の発展に向けて、損害保険会社の立場で実証実験で抽出された課題の解決を目指すとともに、他業態への貿易取引におけるブロックチェーン活用の普及に向け、NTTデータが設立を目指すコンソーシアムへの参画を検討している。