宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、JAXAと気象庁が共同で開発した「空港低層風情報(Airport Low-level Wind INformation)」(ALWIN)の実運用が、東京国際空港(羽田)と成田国際空港で開始されたと発表した。

ALWIN運用評価の様子(撮影協力:日本航空)

ALWINの情報提供の流れ

ALWINは、航空機の着陸経路上における、風向・風速、低気圧や前線の付近で生じやすい風の急変域であるウィンドシアーや乱気流などの「風の情報」を提供するサービス。平成21年度から研究開始された技術で、平成25年度から成田国際空港、東京国際空港で試作システムの運用評価が開始されていた。

現在、成田国際空港では毎年100件程度の着陸復行(ゴーアラウンド)が発生し、そのうち9割程度が、ウィンドシアーや乱気流の影響と言われている。1回の着陸復行で到着時刻が20分程度遅延する原因となり、また着陸時の乱気流の影響による乗員・乗客の死傷事故が過去10年間で2件発生しているという。

ALWINの実運用開始により、管制官から無線による音声通信で行われているウィンドシアーなどの情報提供に比べて、風の状態変化をリアルタイムでより詳細かつ正確に把握できるため、より安全に着陸することが可能となり、定時性向上の効果も期待されるということだ。

ALWINの情報提供の内容。従来に比べて、風の状態変化を詳細かつ正確に把握できるため、パイロットが適切な対応(速度、推力の調整、姿勢の制御など)を行うことが可能になる。

ALWINの情報提供の流れとしては、まず、地上に設置された空港気象ドップラーレーダーおよびドップラーライダーなどの観測データから、ウィンドシアーや空港周辺の地形や建築物の影響などによる乱気流を自動的に検出し、グラフィックデータで運航会社に配信。そこから、すでに殆どの旅客機に装備されているデータ通信システムであるACARSで送信可能な形式に変換して航空機に送信する。航空機に送信する機能については、現在、JALとANAのみを対象として試行的な運用を行っているという。

なお、同サービスにおいて、JAXAはウィンドシアーや乱気流の自動検出プログラムの開発とACARSを用いたパイロットへの情報生成プログラムの開発を担当している。また、気象庁はドップラーレーダーおよびドップラーライダーの観測データを用いた風算出プログラムの開発、航空気象観測業務の一環としてALWINの運用を担当しているということだ。