東北大学は4月18日、高屈折率で透明な二酸化チタン(TiO2)薄膜をガラス基板上に低温で作製する技術を開発し、光の反射・透過を制御する光学コーティングの作製に成功したと発表した。

同成果は、東北大学大学院工学研究科 博士課程 石井暁大氏、高村仁教授らの研究グループによるもので、3月30日付の国際科学誌「Applied Surface Science」オンライン版に掲載された。

カメラや液晶プロジェクタなどの光学機器では、光の反射・透過を制御するために、屈折率の異なる材料を層状に重ねた光学コーティングが利用されている。光学コーティングでは材料界面での光の反射を利用するため、高屈折率層としてより高い屈折率を持つ材料の開発が求められている。

種々の酸化物のなかでTiO2は最も高い屈折率を持つ材料であり、光学コーティングに広く利用されている。TiO2はルチル型という結晶構造になるとき屈折率が最大となるが、薄膜でその結晶構造を実現するためには、高価な単結晶基板や700℃程度の高温成膜プロセスが必要であり、ルチル型TiO2薄膜の実用化には大きな障壁があった。

今回、同研究グループはパルスレーザー堆積法でTiO2に微量のアルミニウム(Al)を添加することにより、安価なガラス基板上に350℃で、光学コーティングに利用可能な高品位ルチル型TiO2薄膜の作製に成功した。同薄膜を光学コーティングに用いると、従来品よりも広い可視光領域で高い反射率を示す高性能可視光ミラーが作製できるという。

同研究グループは同技術について、液晶プロジェクタやカメラなどさまざまな光学機器の性能向上や作製工程の簡素化・低コスト化が期待されると説明している。

今回開発された透明で高屈折率なTiO2薄膜(左)とそれを用いた可視光ミラー(右) (出所:東北大学Webサイト)