東北大学大学院薬学研究科の平田祐介助教、野口拓也准教授、松沢厚教授、青木淳賢教授、福永浩司教授らの研究グループは、動脈硬化症や生活習慣病などのさまざまな疾患のリスクファクターとされているトランス脂肪酸が、自己由来の起炎性因子の1つである細胞外ATPにより誘導される細胞死を促進することを明らかにした。
トランス脂肪酸の摂取が動脈硬化症発症・進展に寄与していることが想定され、これまで未解明だった疾患発症機序の一端の解明につながる発見となった。この研究の成果は、日本時間3月30日(現地29日)に、Journal of Biological Chemistry誌(電子版)に掲載された。
同研究では、トランス脂肪酸摂取による疾患発症リスクが特に高いとされている動脈硬化症において、病巣における自己由来の起炎性因子(damage-associated molecular patterns: DAMPs)の漏出やマクロファージの細胞死が病態発症に関連することに着目。細胞外ATPをはじめとした自己由来の起炎性因子は、障害を受けた組織から漏出してマクロファージなどの免疫担当細胞に作用することで、炎症や細胞死を引き起こす。動脈硬化症の発症・進展には、病巣における自己由来起炎性因子の漏出や、マクロファージによる炎症や細胞死が主要な寄与を果たしている。
DAMPsのひとつである細胞外ATPによって誘導されるマクロファージの細胞死に対するトランス脂肪酸の影響を調査した結果、食品中含有量の最も高いエライジン酸をはじめとしたトランス脂肪酸が、細胞外ATP誘導性細胞死を著しく促進することを見いだした。この成果は、トランス脂肪酸摂取に伴う疾患発症機序の一端を分子レベルで明らかにした重要な基礎的知見として位置付けられ、今後の疾患発症機序の全容解明に向けて、より一層の研究の進展が期待されるということだ。