日立ハイテクノロジーズは、東京腎臓研究所 所長/日本医科大学 名誉教授の山中宣昭氏、鳥取大学医学部解剖学講座講師の稲賀すみれ氏、鳥取大学医学部周産期・小児医学分野 准教授の岡田晋一氏という3名の教授の監修のもと、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた病理組織解析画像のプラットフォームを開設したことを発表した。

巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と診断された腎生検組織切片で見られた糸球体足細胞の低真空SEM像(白金ブルー染色)(出所:日立ハイテク・ニュースリリース)

現在、腎生検組織の電子顕微鏡による観察は、主に透過電子顕微鏡(TEM)が活用されているが、試料作製の時間や熟練した技術が必要となっている。近年、稲賀氏らは同社の「卓上顕微鏡Miniscope」で、光学顕微鏡用のパラフィン切片をSEMで観察する手法を開発した。この方法では、より簡便かつ迅速な病理組織の電子顕微鏡画像の解析が可能となるうえ、TEMや光学顕微鏡では得られない3次元データによる情報を取得できることから、腎生検組織観察においてSEMの活用機会が増えることが予想される。

このたび開設されたプラットフォームは、疾病に関するSEM画像について、関係分野の研究者・臨床医の方へ情報共有の場を提供するもので、同社が運営する会員制サイト「S.I.navi(エスアイナビ)」内に設置されるという。当初は腎臓疾患に関する病理組織の観察画像を掲載し、今後は関連分野の研究者・臨床医から多くの症例に関するSEM画像の提供を募るなど、掲載データを増やすことでデータベース化を進め、医療現場における新たな病理組織解析法の確立とその診断基準の早期整備への貢献を目指すということだ。

卓上顕微鏡Miniscope TM3030Plus(出所:日立ハイテク・ニュースリリース)