PTCジャパンは13日、同社の3D CADソフトウェア「Creo 4.0」の最新メンテナンスアップデート(M10)および将来のアップデートに関する記者発表会を実施した。同会見に際して、米PTCのCAD領域の統括者・ブライアン・トンプソン氏が来日。同社の現状や理念についてプレゼンテーションを行った。
フィジカルとデジタルの融合
昨今、「フィジカルとデジタルの融合」に興味を持つ顧客は多いと明かしたトンプソン氏。両者の融合が進む中で、IoTによるモノのデータの取得と活用、3Dプリンティングを活用した部品生産の高速化が見られることを挙げ、特にAR/VRを用いた設計レビューはまさに「デジタルデータをフィジカルの世界でどのように活かすか」という命題の好例であると語った。
IoTを設計段階から最適化
トンプソン氏が挙げたキーワードの中で、「IoT」にまつわる新機能が「Creo Product Insight」だ。現状は未実装で、2017年6月のリリースを予定している。
現状のIoTの産業活用では、すでに稼働している製品にセンサを後付けし、オペレーションに活用するフローが多い。そこから一歩進めて、製品設計の段階からその先にある製造、サービスをふまえた"コネクティビティ設計"を行うための機能として、「Creo Product Insight」がリリースされた。
具体的には、新製品の設計を行う際に、センサーをあらかじめ組み込み、その数を最適化することが可能になる。同社のPLMソフトウェア「Windchil」やIoTプラットフォーム「ThingWorx」を用いて、センサから取得したデータを読み込み、想定とリアルデータの双方を吸い上げることで、設計チームのよい決断を後押しし、次世代の製品設計をより効果的に行えるよう支援する。
大手3Dプリンティング企業との連携
3Dプリンティングはプロトタイプ制作の重要な手法として活用されているが、昨今は実際の設計を3Dプリンティングで行うことに注目が集まっているという。そんな中、3Dプリンティングが部品の製造に直結しないのは、3Dプリンタで出力可能な形状や寸法が厳密でないという問題がある。また、CADのモデルやソフトウェアにはさまざまな種類があり、出力(完成)までに必要な設計プロセスが多く、効率は決していいとは言えないという課題もある。
トンプソン氏いわく、PTCとしては、3D CADツールを3Dプリンティングのフローに盛り込む必要があると考えているとのこと。そして、顧客の設計フローをよりシンプルにするため、3Dプリンティングのノウハウを持つ外部企業とパートナーシップを結ぶことを発表した。
「ストラタシス」、「3Dシステムズ」といった3Dプリンタの製造を手がける企業からは、3Dプリンタ向けのドライバの提供を受ける。これにより、ユーザーはCreoから直接3Dプリンティングを行うことが可能となる。オンライン3Dプリンティングサービス「i.materialige」とも提携を行い、同サービスでの出力もサポート。また、主に3Dプリンティングソフトを扱う「materialise」とも近日中にパートナーシップを結ぶ予定という。
AR活用で製品を実寸大にて確認
最後に、PTCジャパンの芸林盾氏が、M10アップデートで追加された新たな「AR機能」についてデモンストレーションを実施した。
AR機能は、Creo上で制作した3Dモデルを、スマートフォンやタブレットなどの端末で表示し、レビューできるというもの。ARマーカー(名称:ThingMark)と3Dモデルの表示位置・向きはCreoの画面上で指定できる。
AR表示でのレビューのメリットは、スケールなどの図面では分かりづらい部分を原寸で立体視できること。データはPTCのサーバにアップロードされ、ThingMarkを共有し、遠隔地のメンバーなどとの連携に用いることもできる。この機能はベーシックパックに含まれており、追加料金なしに無料で使えるという。