岡山大学は、同大学院医歯薬学総合研究科(医)公衆衛生学の荻野景規教授、伊藤達男助教、長岡憲次郎助教の研究グループが、JCQモデルを用いて仕事ストレスと関連性のある血液マーカーを検討し、うつ病や循環器疾患の予防および仕事ストレスを早期に発見するために、血清中のアルギナーゼⅠ(主に肝臓において存在する可溶性タンパク質)が指標のひとつとなることを明らかにした。この研究成果は4月13日(日本時間)、米国のオンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

近年、勤労者の過剰労働などによるメンタルヘルスの不調が増加しており、2015年12月からはストレスチェック制度が義務化されるなど、勤労者の心理的な負担の把握は重要な課題となっている。仕事ストレスの評価・調査方法としては、カラセックの「JCQモデル」(職業性ストレスの測定法として開発された質問紙)が広く用いられている。JCQモデルは、仕事のストレス が仕事の要求量、仕事の裁量権、社会的支援 によって決定され、どの程度ストレスに曝露されているかを判断するものだ。

これまで、仕事ストレスが高いほど循環器疾患のリスクが高まることはわかっていたが、根底にあるメカニズムについては不明であった。また、リスクの評価として主観的な調査だけでなく、客観的な指標も必要となっていた。

荻野教授らの研究グループは、健康な378人の勤労者を対象に、JCQの仕事ストレス調査を行い、仕事ストレスと血管拡張性因子の一つである一酸化窒素やその関連パラメータを比較した。その結果、女性勤労者において、仕事ストレスが高くなると血清アルギナーゼIは低下し、仕事のコントロール(裁量)や社会的サポートが高くなると血清アルギナーゼIが高くなることが判明した。また、うつ病や循環器疾患のリスクとなる仕事ストレスを評価するためには、血清中のアルギナーゼIが指標のひとつになることも明らかにした。

同研究グループは、今回の研究成果で、勤労者の主観に頼っていた仕事におけるストレスの評価方法として、血清アルギナーゼIが有用な指標のひとつになることが明らかになったことで、職場ストレスを客観的に評価するための手段として期待されるとしている。