台湾の市場動向調査企業TrendForceは、台湾のファウンドリUMCの中国子会社United States Xiamen(USCXM)が、2017年第2四半期よりUMCからライセンスされた28nmデバイスの生産を現地で開始する予定だが、このような中国国外の半導体企業が中国内に半導体工場を設立してビジネスを展開するとなると、中国資本のファウンドリは技術、市場シェア、技術者の募集という面で競争激化に直面する可能性があるとの見解を公表した。
それによると、中国資本のSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)とShanghai Huali Microelectronics Corporation(HMLC)の2社は、28nmプロセスの開発に関して中国ファウンドリ業界のリーダー的ポジションにあるものの、こうした外国勢の中国への進出により、競争上、微細化技術のタイムテーブルを加速せざるを得ないプレッシャーにさらされているようである。
中国半導体企業の最先端プロセス「28nm」
同社の調査によると、中国ファウンドリ業界で現在利用可能な最先端の技術ノードは28nmである。 2016年のSMICの28nmデバイス向けのウェハ生産量は、同年の世界全体の28nmデバイス生産量の1%未満であり、世界最大手ファウンドリのTSMC(66.7%)、第2位の米GLOBALFOUNDRIES(GF)(16.1%)、3位のUMC(8.4%)と比べると圧倒的な差がある。
SMICの四半期決算報告のデータによると、2016年第4四半期の28nmデバイスの総売上高に占める割合は3.5%となっている。SMICのCEOであるTzu-Yin Chiu氏は、28nmノードが2017年の主要な収益成長の原動力になると述べており、28nmあるいはそれより先進プロセスで製造された製品の売上高割合を年末までに全売上高の7~9%にしたいとしている。
一方のHLMCは、28nmプロセスの開発に取り組んでる段階にある。同社は台湾MediaTekとの提携により、28nmモバイルチップのテープアウトに成功したと発表しているが、量産を実現するにはまだまだ技術向上が必要な段階に留まっているようだ。同社は、2016年末に28nmの量産を最初に担当するファブ(第2工場)の建設を開始しており、2018年の完成後、試運転を開始する計画としている。また、将来は、さらに先端の微細プロセスへの移行も計画しているほか、FD-SOIの採用も検討中であるとしている。
中国での工場進出ラッシュを続ける外国勢
中国のIC市場の急拡大に伴い、外国企業の中国進出や外国資本の中国への資本投下が増加している。主要な国際的半導体企業は、この重大な時期に自社の子会社を中国に設立したがっている模様で、これにより中国の半導体企業との競争は、激化していく方向に向かうことになるという。
また、技術移転の面では、中国に工場を開設している外国の半導体企業は、一般に、本国で現在採用しているものより少なくとも1世代遅れた技術を中国工場にライセンスしているが、それでも中国資本のメーカーの立場を不利にするだけのインパクトがあるという。つまり、中国メーカーは、海外企業が中国工場で用いているのと同程度の技術を用いて競争する必要がでてくるためである。
すでに複数の海外ファウンドリが、中国でのファブ・プロジェクトを進めている。例えば2018年に稼動を開始する予定のTSMCの南京工場は、16nm FinFETプロセスでデバイスを製造する計画だ。SMICが14nm FinFETプロセスを2019年の初めに大量生産向けに提供できるようになると予想されるものの、このTSMCの計画はSMICにプレッシャーをかけることになるとTrendForceでは予測している。また、成都では、GFのファブが2019年に竣工する予定で、22nm FD-SOIを展開する計画になっている。つまり同工場は、HLMCのFD-SOIの開発スケジュールを追い抜こうとしているわけだ。
さらに、冒頭のUMCの28nmプロセスのUSCXMへのライセンス供与は、2016年末に稼動を開始した時点の50/40nmプロセスを採用する初期段階から、一気にプロセスの微細化を加速させるもので、早ければ第2四半期中に28nm Poly/SiONプロセスによるデバイス製造を開始する予定だという。2017年末にはUSCXMの月間ウェハ生産能力は約1万6000枚に達し、そのうちの1万枚が28nmプロセスによるものと見込まれることから、TrendForceでは、USXCMが中国における主要な28nmプレイヤーになるとの見通しを示している。
なお、現在28nmプロセスでの製造を受託しているSMICは、このUMCの計画の影響をもろに受けることになりそうだという。UMC本体は28nm技術の量産でSMICより2年ほど先行しているので、USCXMは、親会社から安定した歩留まりを提供できる成熟した28nm技術を入手できる一方、SMICの28nmのPoly/SiONプロセスはローエンドおよびミッドレンジIC製品向けで、高度なHigh-k/メタルゲート(HKMG)プロセスは未経験だからである。
こうした動きをまとめてみると、海外資本による中国国内の工場が本格的に稼働すると、中国資本のファウンドリ業界は、技術者、リソース、市場シェア確保のために、これまでになかった熾烈な競争に巻き込まれることになるというのがTrendForceの見解である。中国半導体業界は、近い将来、外国勢との戦いに向け、自社の技術ロードマップを速やかに前倒ししていく必要に迫られることになるだろう。