ルネサス エレクトロニクスは4月11日、都内で国内では2014年以来となる大規模なプライベート・カンファレンス「Renesas DevCon Japan 2017」を開催。基調講演にて、同社 執行役員常務 兼 第二ソリューション事業本部本部長の横田義和氏が登壇し、組み込みからクラウド、データセンターまで含めたセキュリティソリューションが新たなビジネスモデルの創出につながること、ならびにセコムとの協業を行っていくことを明らかにした。
IIoTへの注目の高まりとともに、産業機器や工場に対するセキュリティニーズも高まりを見せている。こうした動きに対し、横田氏は、「従来はクラウドのセキュリティを確保すれば良かったが、攻撃の多くがIoTのエンドポイントに端を発するものとなっている。我々はエンドポイントのセキュリティとして、「Confidentiality(気密性)」、「Integrity(完全性)」、「Availability(可用性)」を担保しており、これによりICT/クラウドのセキュリティとエンドポイントのセキュリティを組み合わせることで、システム全体のセキュリティレベルを高めることができるようになる」と説明。Root of Trustをベースに、製造時の改ざん防止ソリューションなどを提供するほか、将来的には暗号鍵を顧客からルネサスやパートナーが預かり、Over the Air(OTA)による機器認証サービスなども展開したいとしており、「セキュリティは単なる脅威の排除を行うものではなく、新たなビジネスモデルの創出につながる」とする。
そうした流れを受け、同社は同日、セコムならびにセコムトラストシステムズとIoTセキュリティの基盤開発で協業していくことを明らかにした。具体的には、ルネサスが、エンドポイント向けマイコンへの機密情報の組み込み、ならびにその管理技術を、セコムトラストシステムズが認証局、電子証明書の発行などの情報セキュリティ技術を、セコムが物理セキュリティや運用基準、鍵管理の方法などのノウハウの提供をそれぞれ行うこととなり、横田氏は「上流から下流まで一気通貫したIoTセキュリティの世界を構築することを目指す」と説明する。実際のサービスの運用はセコムが行うことになると見られるが、「ルネサスとしてもセキュリティ分野における現場のノウハウなどを得ることができ、より堅牢なデバイスの開発につなげることが期待できる」とするように、単にデバイスを供給する契約ではなく、ともにより良いサービスの実現に向けたコラボレーションであることを横田氏は強調していた。
セコムというと、警備員による警護、というイメージが強いが、監視カメラや見守りサービスなど、さまざまな組込機器を活用することで、現実社会のセキュリティを確保しようとしている。そうした企業が自社の機器のセキュリティをおろそかにできるわけがなく、エンドポイントのセキュリティを高めたかった同社と、エンドポイントのセキュリティをアピールしたかったルネサスの思惑の一致が、今回の協業につながったという |
ちなみに、今回の協業はセコム、ルネサス双方が必要性を感じ、実施されたもので、どちらが一方的に声をかけて実現したものではないとのこと。ルネサスでは、こうした異業種とのコラボレーションを今後も進めることで、新たな市場の創出を図っていくとしており、従来のOEMメーカーとの付き合いのみならず、その先にいる顧客にも積極的にアプローチをかけていくとしている。