IDC Japanは4月10日、国内IoT(Internet of Things)市場におけるテクノロジー別の支出額予測と向けITサービス市場の支出額予測を発表した。説明会では、それぞれの市場について説明が行われた。

国内IoT市場、2016年の支出額は11兆円に達する見込み

IDC Japan シニアマーケットアナリスト 鳥巣悠太氏

テクノロジー別の市場予測については、 コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏が説明を行った。

国内IoT市場の2016年の支出額は5兆270億円であり、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)17.0%で成長し、2021年の支出額は11兆円に達する見込みだという。同社は、こうした国内におけるIoT支出を「ハードウェア」「コネクティビティ」「ソフトウェア」「サービス」という大きく4つの「技術グループ」に分類して予測を行っている。

国内IoT市場 支出額 実績と予測 資料:IDC Japan

鳥巣氏は、IoT市場の成長を促進する要因の1つとして、「IoT Enabled」ソリューションを挙げた。同ソリューションは、企業がプロバイダーとして、ベンダーが提供するIoTリソースを活用して、顧客に提供するソリューションとなる。

国内IoT市場の成長を牽引する「IoT Enabled」ソリューション 資料:IDC Japan

同社は全49種のIoTのユースケースを36種に集約し、それぞれのユースケースについて2016年の支出額を算出し、CAGRを予測している。鳥巣氏は「すでに、竹中工務店、コマツ、日立建機などが発表しているが、ITベンダーとのパートナーリングによって、さまざまなユースケースが創出されている。今後も新たなユースケースが生まれるだろう」と語った。

国内IoT市場 産業分野別/ユースケース別予測(2017年~2020年) 資料:IDC Japan

IoT向けITサービス市場はCAGR64.8%の高成長を遂げる見込み

IDC Japan シニアマーケットアナリスト 植村卓弥氏

続いて、IoT向けITサービスについては、シニアマーケットアナリストの植村卓弥氏が説明を行った。

同社は、IoTサービスを「IoT向けITサービス」「IoT向け非ITサービス」「IoTを活用した業務サービス」の3種類に分類している。最後の「IoTを活用した業務サービス」が、鳥巣氏が説明した「IoT Enabled」ソリューションに相当する。

植村氏は、「現在のIoTサービス市場において、IoT向け非ITサービスが圧倒的なシェアを占めているが、2021年にかけては、IoT向けITサービスが増えていき、市場の成長を牽引することが見込まれる」として、IoT向けITサービスについて説明した。

国内IoT向けITサービス市場の2016年の支出額は前年比96.9%増の548億円だが、2016年~2021年にかけてCAGR64.8%で成長し、2021年の支出額は6670億円になる見込みだという。

IDC JapanによるIoTサービスの分類

IoT向けITサービスの市場予測

植村氏はIoT向けITサービス市場の成長を促進する要因として「新たなビジネス創出に伴う支援需要」「基幹システムとの連携領域の拡大」「PoC(Proof Of Concept)の本格案件化」「デジタルトランスフォーメーションの進行」を、また、成長を阻害する要因として「人材の不足」「ユーザーによる内製化の進行」を挙げた。

IoT向けITサービスの成長を促進・阻害する要因

こうした成長を促進・阻害する要因を踏まえたうえで、植村氏は、IoT向けITサービスが抱える課題を2つ説明した。

1つ目の課題は「PoCからのスケール拡大」だ。同社が従業員100人以上の企業を対象に行った調査によると、2012年以前から開始、2013年から201年に開始したPoCがいまだに残っており、本格案件に至らないケースが多く、「PoC疲れ」の状態にあるという。

サービス事業者がこうした状態を解消するには、経営者や意思決定者を巻き込むことが案件を絞り込むことが重要とした。

2つ目の課題は「データ連携における障害」となる。データの連携がIoT活用のカギとなることが共通認識になりつつある一方で、「部門間」「企業グループ間」「異業種間」など、ステークホルダーの間の壁がデータ連携を阻んでいるという。

植村氏は、サービス事業者がこれらのステークホルダー間の調整を行うことが求められているほか、事業者が自らユースケースを創出し、PoCを手がけていくことが重要だと指摘した。

PoCを手がけながらその状態が長期間にわたっているというのは、新たなサービスを創出しようという意欲がある企業にとってもったいない状況と言えよう。日本のIoT市場のスケール拡大に向けて、その打開策を期待したい。