国立がん研究センターと同東病院は4月4日、治験業務において効率的かつ信頼性の高いリモートSDV(Source Data Verification)システムを、日本マイクロソフトと富士通の技術支援によりマイクロソフトのパブリック・クラウド・サービスを基盤にシステムを構築し、治験依頼者である製薬企業のSDVに対して新システムの導入を開始すると発表した。

これまで、治験依頼者は収集した被験者に関するデータをまとめた症例報告書や医療機関における記録との整合性の検証作業を通じて、データが正確であることを確認するSDVを行っていたが、SDVは原資料の持ち出しが禁じられており、医療機関内でSDVを行っていた。そのため、医療機関内にSDV専用室の設置・管理などを行う体制整備が必要だったという。また、医療機関を訪問するための交通費や宿泊費などのコスト、日中の限られた時間帯での作業による時間調整の負担などが必要なため、SDVの効率的運用が求められていた。

一方、東病院では年間100を超える治験を請け負っており、14室のSDV専用室は常に治験依頼者により埋まっている状態となっている。同病院では、2013年に富士通の電子カルテ・システムを導入し、2014年には電子カルテを含む治験における原資料を保管・管理するための治験原データ管理システムを構築している。

リモートSDVは、治験実施医療機関に赴き直接原資料を閲覧するSDVと比較して、専用の閲覧スペースの不要化やモニタリングの効率化、費用の削減などのメリットがある一方、閲覧資料が本当に原資料であるかどうかの真正性確保やアクセス・セキュリティ確保などが課題として挙げられているという。

そこで今回、真正性やセキュリティに配慮し、院内の原資料を遠隔閲覧できるリモートSDVシステムを構築。

開発はコストや事業継続性を意識し、マイクロソフトが提供するパブリック・クラウド・サービス上に、治験原データ管理システムにアクセスし原資料を閲覧するための同システムを構築した。パブリック・クラウドの利用により、サーバ設置に関する費用を削減できるとともに、スペックをフレキシブルに変更できることで、利用者の増減に際し問題なく対応を可能としている。

同システムは、遠隔から閲覧する資料を原資料として取り扱いが可能になり、原資料について被験者情報がすべて閲覧できるほか、インターネット環境が整備された場所であれば、専用の部屋を整備しなくても利用が可能(企業内設置場所については東病院の定める条件がある)。加えて、SDVにおける多様な規制要件やガイドラインに合致したシステムを構築し、信頼性を確保したという。

さらに、同システムと治験原データ管理システムとを連携したことで、真正性を確保した原資料を外部から直接閲覧を可能とし、医療機関を訪問して閲覧できるSDVと同じデータを表示することに加え、リアルタイムに原資料を治験原データ管理システムに反映するため、閲覧内容に時差が生じないとしている。

同システムにより、治験依頼者によるタイムリーなSDVが可能となり、モニタリングの効率化や医薬品開発コスト削減、医薬品開発促進につながることが期待できるという。加えて、同システムを機に東病院では病院情報システムのグローバルスタンダードを見据え、CDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)標準など海外標準の採用も視野に入れたシステム開発を行い、治験に関する必須書類におけるドキュメントの電子化についても検討していく予定だ。