ベルギーの半導体ファブレス企業ICsenseは3月28日(欧州時間)、TDKの100%子会社で、ホール効果を利用した磁気センサ(ホールセンサ)のサプライヤである独TDK-Micronasに買収され、日本のTDKグループの一員になったと発表した。TDKからも同時にICsense買収の発表が行われた。買収金額は非公開。

ICsenseは2004年にベルギーのKU Leuven(ルーベン・カトリック大学)の工学部からスピンオフして設立されたアナログ、デジタル、ミクスドシグナルおよび高電圧のカスタムICの設計サービス企業。自動車、医療、産業機器および消費者市場向けに顧客ごとにカスタマイズしたASICソリューションを開発・提供してきた。そのコア技術は、センサとMEMSのインタフェース、高電圧IC設計、電源、バッテリマネジメントなどである。

センサ事業強化にASICが必要となったTDK

KU Leuven工学部の教授らが1984年に創設した世界的に有名な半導体研究機関imecとは同じベルギーのルーベンに本社を構えていたICsenseは、imecの研究パートナーとしてメディカルエレクトロニクス向けシステムに搭載されるASICの設計を分担してきた経緯がある。

TDKはこの買収を通じてセンサ・アクチュエータ事業をさらに加速させると発表している。実は同社、近年、立て続けにセンサ関連企業の買収を進めている。ホール素子を使った磁気センサのほか、自動車および産業機器向けモーター用組み込みコントローラーを全世界に向けて供給する独Micronasを2015年12月に263億円で、慣性センサやMEMSセンサを扱う仏Tronics Microsystemsを2016年8月に55億円で、同年12月には米国の慣性センサのグローバルカンパニーであるInvenSenseを1500億円で買収するとアナウンスしており、2021年3月期までにセンサ事業の売上高を現在の4倍となる2000億円に引き上げる計画を立てている。

こうしたセンサの値を読み取り、信号処理を行うASICは、センサビジネスの拡大にとって欠かせないものであることから、TDKは今回のICsense買収を決めたという。なお、ICsenseの経営体制は今後も継続し、ICsenseという社名も継続使用の予定であるという。

なお、TDKの磁気センサビジネスグループゼネラルマネージャー兼TDK-MicronasのCEOであるMatthias Bopp氏は、「この度の買収により、我々はセンサ事業において自動車および産業機器市場における地位を固め、付加価値を高めることで、顧客によりよいサービスを提供することができるようになる。我々の持つ磁気センサ技術における強みと、この度のICsense買収で得られる知見を組み合わせれば、自動車・産業機器分野のあらゆる用途に対応できる素晴らしい一時代を築くことができる」と述べているほか、ICsenseのCEOであるBram De Muer氏は「我々の革新的なアナログ、ミクスドシグナル、高電圧ASICは、TDKグループの製品ロードマップの実現を後押しし、センサのグローバル戦略を支えていくことになる。また、TDKのグループ企業となることにより、ICSenseの新規および既存顧客向けのASIC開発・供給体制が一層強化される」と述べている。

TDK-MicronasのCEOであるMatthias Bopp氏(左)とICsenseのCEOであるBram De Muer氏(右) (出所:ICsense)