北海道大学は、SNS(Flickr)で共有されている位置情報付きの写真から、景観の文化的価値を評価する方法を開発したと発表した。

景観写真の撮影されやすさを考慮して点数化した様子

同研究は、北海道大学博士課程3年の吉村暢彦氏と日浦勉教授らの研究グループによるもので、生態系サービスに関する専門誌「Ecosystem Services」に2017年2月28日、オンライン公開された。生態系サービスとは、天然資源等、人々が日々使用している自然から得られるものやことをサービスとみなす研究分野で、経済的価値付けなどを行うことで利用と保全のバランスを考える手がかりとしている。同研究では、特にその評価が進んでいないと言われる文化的サービス(文化基盤やレクリエーション、精神的効果など)に注目し、より広域かつ詳細に、また適用可能性の広い手法を開発することを目的としている。

同研究では、Flickrに投稿された位置情報付きの写真が撮影された場所から、地理情報システム(GIS)を用いて見える範囲を計算し、よく撮影されている場所を推定して景観の需要を評価。景観写真の撮影されやすさを考慮して点数化して集計し、様々な写真の撮影位置から撮影可能な場所は、点数が高くなるようにした。また、評価した景観需要をもとに、景観需要がある場所と同じ環境がどこにあるかをMaxentというモデルを使って推定し、景観の供給ポテンシャルを評価したということだ。

景観需要(左図)と供給ポテンシャル(右図)。左の図では赤色の箇所に需要が高く、右の図では緑色や黄色の箇所が「需要地と火山が近い」、「開けた場所がある」など、環境の要素が似ている場所を示している。

その結果、景観需要は、森林や湿原、湖等を含む自然公園、特に国立公園で高得点の場所が多く、農地や都市部にも需要の高い場所が見られた。特に、大雪山国立公園や支笏洞爺国立公園には、需要地より供給ポテンシャルが上回っていたという。景観の需要と供給ポテンシャルを比較することによって、例えば、景観需要のある場所が保全の対象地になっているのか、農地景観で観光利用できそうな場所があるのかどうか等を調べることができるということだ。

今後の課題として、他のソーシャルメディアも含め、このような評価手法を改善することや、政策への利用促進が挙げられている。2016年に環境省は「国立公園満喫プロジェクト」をスタートし、観光利用を進めるとしており、同研究は、このようなプロジェクトにおいても保全と利用のバランスの確認や施設配置等に参考になると考えているということだ。