市場動向調査企業である英IHS Markitは3月27日(欧州時間)、フレキシブルな(プラスティック基板を用いて曲げることが可能な)AMOLED(アクティブマトリックス有機EL)ディスプレイの需要が急激に伸びており、2017年第3四半期の出荷額は32億ドル規模に達し、リジッドな(従来通りガラス基板を用いているため曲げられない)AMOLEDパネルの出荷額(30億ドル)を上回るとの予測を発表した。

IHS Markitによると、ハイエンドのスマートフォン(スマホ)に使われるフレキシブル有機ELディスプレイは、2016年と比べて150%増の勢いで伸びることが見込まれている。IHSのディスプレイ調査担当主任アナリストであるJerry Kang氏は「ブランドを有するスマホメーカーは、率先してフレキシブル有機ELを採用することにより、リジッドな有機ELやリジッドな液晶パネルを用いている競争相手に差別化を図ろうとしている」と述べている。

韓国Samsung ElectronicsとLG Electronicsは共に2013年から一部のスマホに有機ELディスプライを搭載してきたが、有機ELパネルの出荷数そのものがなかなか増えなかったこともあり、主流になれなかった。しかし、近年、多くのパネルメーカーがフレキシブル有機ELの生産能力を増やしつつある。これらのメーカーは、フレキシブルパネルに製造プロセスを最適化するとともに、パネルのデザインも改善し、スマホメーカーにとって、フレキシブル有機ELディスプレイが魅力的になるような工夫を続けている。

こうした流れを受けてほとんどのスマホメーカーは、2017年のモデルにフレキシブル有機ELを採用しようとしている模様だ。もちろん、一部のメーカーでは有機ELが他のパネルに比べてまだまだ高価であるために採用を見送ろうとしていることも事実だ。そうした動きに対しKang氏は、「現在、たしかにフレキシブル有機ELパネルの製造コストはリジッドよりもはるかに高価だが、製造歩留まりが向上するにつれて、将来的には、プラスチック基板によるフレキシブルパネルの価格はガラス基板のリジッドパネルの価格よりも下がるだろう」と述べており、フレキシブル有機ELパネルの将来性に期待をのぞかせている。

図1 四半期ごとの有機ELの出荷額実績(2016年)と予測(2017~2018年)。青棒グラフがリジッド有機EL、緑グラフがフレキシブル有機EL(いずれも単位は10億ドル)、折れ線グラフは、有機EL全体に占めるフレキシブルの割合(単位は%) (出所:IHS Markit 2017.3)