秋田大学、東京海洋大学、基礎生物学研究所は、凍結保存した精巣組織の細胞から絶滅危惧種であるメダカを再生することに成功したと発表した。

同成果は、秋田大学バイオサイエンス教育・研究サポートセンターの関信輔助教、東京海洋大学の吉崎悟朗教授、基礎生物学研究所の成瀬清特任教授の研究グループによるもので、3月3日に英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

凍結保存した精巣組織の細胞から絶滅危惧種のメダカを再生するまでの流れ

同研究グループは、メダカ精巣をまるごと凍結保護溶液に浸したのちに、-196℃の液体窒素中で冷凍を行った。それらを解凍後に、細胞の生存を解析したところ、1年間凍結保存しても、再現性よく精原細胞を得られることが分かった。さらに、これらの細胞を孵化直後の代理親メダカ仔魚へ移植することで、代理親が雄の場合は凍結精巣に由来する機能的な精子を、雌の場合は凍結精巣に由来する機能的な卵を生産することができた。また、これらの代理親を交配することで、凍結精巣中の精原細胞由来の次世代を生産することに成功したということだ。

一般的に、卵と精子の凍結保存は、絶滅危惧種や遺伝子改変動物を永続的に保存する方法として知られているが、魚類の卵はサイズが大きく、脂肪分に富むため卵や胚をそのまま凍結保存する技術の開発は進んでいなかった。同研究グループは、絶滅の危機に瀕している「東京めだか」(資料提供公益財団法人東京動物園協会 葛西臨海水族園)や、産卵数が少ないダルマメダカの雄の精巣を凍結保存し、ここから得られた精原細胞を代理親であるヒメダカに移植することで「東京めだか」やダルマメダカを産卵数が多いヒメダカから得ることに成功した。

同研究グループの成瀬特任教授は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構が実施しているナショナルバイオリソースプロジェクト・メダカの中核機関代表を務めており、研究上有用な近交系統や野生系統など500系統を超える様々なメダカを国内外の研究者へ提供している。近交系統や野生系統は飼育しつづける以外に保存方法がなかったが、この技術の開発によってそれらメダカ遺伝資源を半永久的に凍結保存することが可能になったということだ。