首都大学東京(首都大)は3月28日、π共役ポリマーの各末端に目的の官能基を効率よく導入できる精密合成法を開発したと発表した。

同成果は、首都大学東京大学院理工学研究科の野村琴広教授らの研究グループによるもので、3月24日付けのドイツの科学誌「Angewandte Chemie International Edition」オンライン版に掲載された。

有機エレクトロニクスへの応用が期待される共役ポリマーは、ポリマーの繰り返し単位(主鎖)の種類や長さ(共役長)のほか、末端の化学状態の影響を受けて特性が変化することが知られている。高い光機能の発現には、規則的かつ構造欠陥や不純物の混在の少ないポリマーの合成が必要で、ポリマー末端の均質化や特定の官能基の導入ができることが重要となる。

同研究グループはこれまでに、これまでに構造欠陥や立体規則性の低下などを解消できる合成手法として、ルテニウム触媒を用いたオレフィンメタセシス重合法の開発に成功していた。またこの手法で合成した後に、別の触媒反応を用いることで、ポリマーの両末端に目的の官能基を高効率で導入できることも明らかにしている。しかし、π共役ポリマーの2つの末端にそれぞれ異なる官能基を導入する手法はなかった。

今回、同研究グループは、モリブデン触媒を用いたオレフィンメタセシス重合法を詳細に検討。この結果、ルテニウム触媒を用いた場合の優位性はそのままに、π共役ポリマーの2つの末端の片側のみにモリブデンと炭素の2重結合(触媒活性種)が導入されることがわかった。この触媒活性種は、続く反応で容易に目的の官能基に置き換えることができるため、π共役ポリマー末端の片方のみに目的の官能基をほぼ100%の確率で導入することが可能だという。また、残ったもう一方の末端は反応しやすい芳香族ビニル基であるため、既存の反応によって容易に官能基の変換および導入ができる。

今回の成果について同研究グループは、光機能などのポリマーの特性と末端官能基との関係をより詳細に解明および制御できるだけでなく、ほかの材料との接合、固定化、複合化や集積化も含めたより緻密な材料設計が広く可能になると説明している。

今回開発した手法の特徴 (出所:首都大Webサイト)