ハイテク市場調査企業の仏Yole Développementは3月21日(欧州時間)、バルクGaN基板市場と題する市場レポートの概要を発表した。

Yoleによれば、商用のGaNベースのデバイスは、レーザーダイオードやLEDのようなオプトエレクトロニクス・デバイスとパワートランジスタやRF高周波デバイスなどの電子デバイスアプリケーションの両方で利用されているという。

図1 バルクGaN基板を用いるデバイスの分類 (出所:Yole Développement)

また、オプトエレクトロニクスアプリケーション、特にGaNベースのレーザーダイオードとGaN-on-GaN LEDは、2016年から2022年までのバルクGaN基板市場の主流になると同社では予測している。ただし、これまでGaNベースのレーザーダイオードを推進力してきたBlu-rayセグメントは、映像コンテンツのディスクによる提供からストリーミング視聴へのユーザーの消費行動の変化や、ノートPCへの光学ドライブの非搭載化が進んでいることもあり、UHD Blu-Rayの売り上げも期待できない状況から、市場の縮小は避けられそうにない。一方で、オフィスプロジェクタやヘッドアップディスプレイ(HUD)などのプロジェクタ分野、バルクGaN基板の成長が期待される自動車用照明分野などが成長セグメントとして期待されるという。

一方のLED市場は、GaN基板の製造技術が向上したことでニッチアプリケーション向けGaN基板の価格が下がっていることもあり、中村修二氏が共同創業者となっている米Soraaやパナソニックが、スポットライトや自動車照明への使用を検討しているという。また、今後の市場ではGaN-on-GaN LEDの成長が期待されるとしている。

ちなみに2016年におけるバルクGaN基板の市場流通量は約60万枚(2インチウェハ換算)と同社では推定している。市場としては、2017年から2022年の間、年平均成長率10%で伸び、2022年には1億ドル以上の規模に達すると予測している。Yoleの技術・市場アナリストであるHong Lin博士は、「すべての市販GaNウェハは基本的にハイドライド気相成長法(HVPE)技術で製造されているが、成長プロセスや分離技術の詳細は企業によって変わる。Naフラックス法やアモノサーマル法などの他の技術は現在開発段階にあり、まだ市場にはあまり出回っていない」と述べており、まだまだ成長の余地が残されていることを指摘している。

なお、現在のGaN基板市場は寡占化が進んでおり、日本企業の住友電気工業(SEI)、三菱化学(MCC)、住友化学の100%子会社であるサイオクス(Sciocs)の3社で85%以上のシェアを有しているという。Yoleでは、これらの日本企業のバルクGaN基板市場での優位性は明らかであり、他の日本および海外企業はまだ少量生産あるいは研究開発段階にあり、これら大手サプライヤに対する競争力をつけるに至っていないとの見解を述べている。