近年、「事業規模に応じてスケールが選択できる」「自社運用よりも保守が楽」といった特長から、利用サーバをオンプレミスからクラウドへ乗り換える企業も多い。そんな中、中国アリババグループでは、2015年よりパブリッククラウド「アリババクラウド」を提供している。また、日本市場向けには、ソフトバンクとアリババグループの合弁会社であるSBクラウドが、2016年12月15日より、日本リージョンの提供を開始した。同社では今回、「アリババクラウド」に関する活用事例を紹介した。
同社は後発ながらも、中国ではトップシェアを誇る。また、中国のみならず、世界13カ所で展開。この状況に対して、「現在は過去7期続けて利用規模が倍増。これは、競合であるAWSやAzureよりも速いスピードでの成長だと自負している」とアリババグループのソン・ジョン副総裁は述べている。
中国で強い知名度を誇る同社が海外展開するメリットは、どこにあるのだろうか。1番大きな特長として、アリババが海外展開することで、中国企業が海外進出する際も、そのまま同じプラットフォーム上で展開でき、大きなコスト削減に繋がることだという。
現在、約10万社の海外展開する中国企業のインフラをサポートすると共に、100社の中国のソフトウェア企業がこのアリババクラウドのプラットフォーム上でサービス提供を行っている。金額に換算すると、約10億人民元をコスト削減できた計算になるという。これに対し同社は、「オンプレに比べて、構築時間や設備投資費が削減できたためだ」と分析している。
また、ソン・ジョン副総裁は、「アリババクラウドでは、ベンチャー企業でも、アリババと同じようなインフラ構築を行えるのが特長。また、中国で4億5000万人のオンライン取引を守っているセキュリティも大きな強みだ。このシステムを世界中に展開していくと同時に、AIやビックデータの活用もアリババクラウドを利用して行える点が魅力である」とコメントしている。
さらに、同社の成功事例として、中国の鉄道情報サイトの例を挙げた。中国では、2017年2月の春節の時、故郷に帰る人々が数億人ほどいるという。これらの人々が、鉄道の切符を購入するために、購入サイトにアクセスすることが想定されていた。しかし、数日だけのために、サーバを強化するには、コストやパフォーマンスが悪すぎた。しかし、アリババクラウドを利用したおかげで、利用量に応じた運用が行えたという。実に、通常1日1億~2億PVほどが、春節の時は1日400億PVを超え、チケット有無に関する検索数は約250億回もあったという。
また、製造業では、工作機械に取り付けたセンサーから吸い上げたデータを、ビックデータ分析やディープラーニングを行い、不良品率を1%改善。これにより、日本円で150億円ほど利益をもたらした例も紹介した。
そんな同社だが、日本での知名度はまだまだだと認識している。今後は、アリババクラウドがIOCのオフィシャルパートナーになったことをきっかけに、イベント協賛などで、さらにアリババの知名度を上げていきたいという。