東京医科歯科大学(TMDU)と九州大学(九大)は3月17日、特発性肺線維症の治療薬であるピルフェニドンが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスの肝臓の炎症所見と線維化を著しく抑制することを明らかにしたと発表した。
同成果は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子内分泌代謝学分野/九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野 小川佳宏教授、東京医科歯科大学医学部附属病院 土屋恭一郎助教らの研究グループによるもので、3月17日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
非アルコール性脂肪性肝疾患はメタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられており、最も進行性のNASHは、肝臓の炎症や線維化を伴ってしばしば肝硬変症や肝細胞癌を発症するため治療介入が必要となる。しかし、NASHの発症機構には不明な点が多く、今のところNASHに対する確立された治療法はない。
一方、ピルフェニドンは特発性肺線維症に対する治療薬として、すでに臨床の現場において使用されているが、抗線維化作用の分子機構は明らかでなく、NASHに対する有効性も不明であった。
同研究グループは今回、独自開発のNASHモデルマウスにピルフェニドンを経口的に投与することにより、脂肪肝の形成には影響を与えずに、NASHの病理所見である炎症所見と線維化を著しく抑制することを発見。ピルフェニドンはNASHモデルマウスにおいて認められた肝臓の細胞死を抑制し、培養肝細胞においても腫瘍壊死因子(TNF-α)により誘導される細胞死を抑制することがわかった。
今回の結果により、ピルフェニドンのNASHの予防薬・治療薬としてのドラッグ・リポジョショニングの可能性が示されたといえる。また、過剰な肝細胞死を抑制することがNASHの予防・治療につながる可能性が明らかになったため、同研究グループは、NASHの病態解明と新しい治療法の開発のためにも重要な知見であると説明している。