産業技術総合研究所(産総研)は3月14日、印刷法により形成できる高性能なp型の有機系熱電変換材料を開発、発電性能を示す出力因子で世界最高クラスとなる600μW/mK2を達成したと発表した。
さまざまな機器から排出される熱(排熱)の有効活用方法の1つとして熱電変換があるが、実用化を果たすためには、熱電変換素子の高効率化と構造的な柔軟性の付与や軽量化といった、素子への利便性の付与が求められていた。そうしたニーズを実現する材料として期待されているのが有機系材料で、軽量かつ柔軟、そしてレアメタルを用いないため低コストで実現できるという特徴があるが、これまでに開発された有機系熱電変換材料は、発電性能が低いという課題があったという。
そこで研究グループは今回、有機系材料であるカーボンナノチューブ-高分子複合材料として、典型的な絶縁体高分子であるポリスチレンをカーボンナノチューブと混合させると、ゼーベック係数が向上することを発見したほか、カーボンナノチューブ-絶縁体高分子複合材料中のカーボンナノチューブの束の直径を低下させることで、ゼーベック係数は変化させずに電気伝導性を向上できることも発見したという。
これらの知見を活用し、低直径のカーボンナノチューブ束をポリスチレンと混合させたカーボンナノチューブ-ポリスチレン複合材料を作製したところ、約100℃において、単純な印刷手法で作製したカーボンナノチューブ-導電性高分子複合材料のこれまでのトップレベルの値に比較してほぼ2倍以上の値となる600μW/mK2を超すパワーファクタを観測することに成功したという。
なお研究グループでは今後、材料内部の微細な構造の制御などを通じた、さらなる有機系熱電変換材料の性能向上、および有機系熱電変換素子の高効率化を進めていくとしている。