LINEの元代表・森川氏が立ち上げた動画メディアとして注目を集めたC CHANNELですが、2015年4月のβ版リリースから1年8か月で早くもアジア各国に展開、動画再生数も急激に伸ばしています。C CHANNELがなぜ短い期間でここまで成長したのか、海外展開を成功させることができたのか。動画メディア運用の現場で実感されていることを、海外事業責任者 肥沼さんと、クリッパー兼ディレクターの清水さんに詳しくお話いただきました!(記事内の数値は2017年1月現在のものです)
月間動画再生回数が5億回を突破。再生数急上昇のわけとは
まずはC CHANNELについて教えてください
C CHANNELは「女子のための動画ファッションマガジン」として2015年4月にWebサイトをリリースしました。その後アプリや各種ソーシャルメディアからも動画を配信を開始し、月間動画再生数は約5億、facebookのフォロワー数はグローバルを含めて500万人を超えました。ユーザーの大半はF1層、18~24歳くらいまでの女性が占めています。
C CHANNELはどうして若い女の子に支持されているのでしょうか?
話題のメイクや流行っているドラマなどを1分のHow to動画にまとめて発信しているので、手軽に情報を得られるところがウケたのだと思います。月間で約1,000本の動画が新規で公開されていて、C CHANNELで自主制作している動画とユーザーが投稿した動画の割合がちょうど半々になります。以前は自社制作動画が多かったのですが、昨年にテレビCMを打ってからはユーザー投稿の動画が増えてきました。
最初から1分動画を作ろうとしていたのですか?
1分動画というのは試行錯誤の結果なので違いますね。2015年の年末頃に再生数が月間1000万回程度で停滞していたので様々な種類のコンテンツを作って、再生数などの推移を見ていきました。その試行錯誤の中で、How To動画の反響が良く、自主制作の動画コンテンツからHow To動画の制作本数を増やし、「女性の悩みを1分で解決」というようなコンセプトにした結果、再生数がぐっと伸びました。
月に500本もの大量で質の高い動画をどのように作っているのですか?
基本的にはアパレル企業などで採用されているSPA(※1)モデルを参考に、一人がプロデューサー兼ディレクター兼カメラマンといった具合に複数の役割を担い、少人数で動画を制作しています。通常の動画制作ではプロデューサー、ディレクター、アシスタントディレクター、カメラマン、アシスタントカメラマン・・・と最低でも5~6名が動きますが、同じような体制で動画を作っていては規模の小さいメディアは赤字になってしまいます。そこで、一人が複数の役割を担う事でコスト削減するというやり方を、代表の森川や取締役の三枝が現場の意見を交えて議論しながら組み立てました。企画にもよりますが、プロデューザー・カメラマン・モデルの3名ほどでチームを組み、編集期間を含めても1本あたり1~2週間程度で仕上げています。1日の撮影本数は6~10本のペースです。
※1:SPAとは、Specialty Store Retailer Of Private Label Apparelの略で、企画から製造、小売までを一貫して行うアパレルのビジネスモデルを指します
動画広告としての広告戦略
現在採用している広告の種類と広告運用体制、販売チャネルについて教えてください。
動画ネイティブアドをメインに運用していますが、アドネットワークも利用していて、インストリーム型の縦型動画広告を導入しています。広告制作チームは数チームあり、各カテゴリのブランドマネージャーと連携して制作をします。
広告販売のチャネルについては、現在は直販と代理店等を介するケースと半々ですが、広告販売を開始してすぐの頃は広告主さまと直接お話させていただく事が多かったです。というのも、C HANNELの立ち上げ時期にはインターネットで動画広告が今ほど普及していなかったり、我々のビジネスモデルを代理店さまを経由して話をしていただいても広告主さまにサービスがなかなか伝わりにくく、ブランディング予算を取りに行くことが難しかったからです。しかし直接話をさせていただくと、広告主さまの方がテレビからWEB動画に移り変わっていくことに対する実感や危機感を持たれていて、WEB動画広告やその制作に対してのニーズが高い事がわかりました。実際に動画広告の販売を開始してから、クライアント数や問い合わせ数は確実に伸びており、ニーズの高まりをより実感しています。
広告以外のマネタイズ手段として取り組んでいることについて教えてください。
広告マネタイズ以外ではインフルエンサーマーケティングを行っています。弊社の子会社にインフルエンサーマーケティングを行うYellow Agencyという企業があり、インフルエンサーの手配から、メーカーさまと組んで、洋服のデザインや企画、商品開発やプロモーションなどを行っています。このインフルエンサーマーケティング事業は今後海外でも展開する予定で、特に注目しているのはソーシャルコマースの分野です。たとえば海外では、タイでfacebook経由のソーシャルコマースを開始予定です。動画とECの相性が良いと思っているので、今後のビジネスの軸になっていくのではと考えています。
海外展開成功の鍵は現地に行って超スピーディーにPDCAを回すこと
C CHANNELの海外展開について教えてください。
現在、タイ、台湾、中国、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピンの8カ国でサービスをリリースしています。2月中旬までにベトナムも開始予定で、それに連携サイトの国を加えると11か国展開をしています。いずれの国も現地の企業と組んでいるのですが、現地の企業の選定の仕方は国によって異なります。たとえばシンガポールでは、Mediacorpというシンガポール国営のニュースメディアと組んでいますし、台湾だとファッションガイドという大きなメディアの創始者の方が新たに立ち上げた企業とパートナーになりました。国によって、政府の影響度やベンチャー企業の成熟度、マーケットの進み具合などが違うので、調査をした結果、どの企業とパートナー関係を結ぶかという判断は代表の森川と精査しながら決めます。
また、我々が組むパートナー先は間違いなくローカル(現地法人)です。あくまで現地に根差した形でのサービス展開を目指しています。ただ、最後の決め手は"人"ですね。会ってみて、仕事のやり方が合わなかったり、あまりやる気を感じられなかったりしたら、いくら実積があってもパートナーには選びません。結果的に、この感覚はけっこう当たっていました。
短期間で海外でC CHANNELを成長させられた要因は何だと思いますか?
一番大きな要因は、現地法人とパートナーを組んで現地で考える体制を作り、ひたすら素早くPDCAを回してきたことだと思います。森川がLINEで培った知見や人脈があったことで素晴らしい現地パートナーと組むことができた事は、海外事業を開始するスピードを上げる要因になりました。さらに、大事なコミュニケーションをスカイプやメールで済ませてしまったり、日本で必要以上に慎重に考えてから現地へ行って施策を行うのではなく、「現地で考え、現地でコミュニケーションを取り、現地でPDCAを回し、素早く意思決定する」ということも成功の大きな要因だっと思っています。なぜなら、動画サービスを取り巻く環境の著しい変化には意思決定スピードが何よりも重要だからです。東南アジアの市場状況も日々変わっています。例えば、いきなり中国企業が投資を持ちかけてくるとか有り得ない話ではありません。そんな環境の変化に対しC CHANNELはLINEで森川に連絡して「はい」「いいえ」で決められるスピード感を持ち合わせてます。
海外チームのマネジメントについて、意識されてきたことなどありますか?
マネジメントももちろん大切ですが、その前にまず、C CHANNELに合った人を採用するところを特に頑張っています。C CHANNELに合っているのは「自分で考えて、自分でPDCAを回して事業を進めることが得意な人」です。また、女性系メディアという特性上、メイクやファッションといったテーマを取り扱う事が多いので、女性を採用するケースも多く、とても楽しんでモチベーション高く取り組んでくれています。ちなみに、採用は引き続き行っており、今もグローバル担当を募集しています。海外で活躍したい女性の方がいらっしゃれば、ぜひご連絡頂きたいです!
あとは、PDCAが巧く回り始めるまで、我慢できるかどうかだと思います。実はC CHANNELは海外でスケジュール通りにサービスインできた国がないんです。スタートしても最初のころは制作からオペレーションまで全てうまくいきませんでした。そこで、うまくいかなかったねと事業撤退することは簡単ですが、それでも粘り強くやっていく。タイは森川が現地で講演をしたんですが、そこでワッと盛り上がって、施策が巧く当たりだし、視聴数も一気に伸びました。他の国でも、タイミングやきっかけはそれぞれですが、PDCAが巧く回り出すタイミングがあったんです。そういうタイミングがくるまで、我慢強くやっていくことが大事なんだと僕は思います。
各国でサービス展開してみて感じる、日本との相違点を教えてください。
まず日本と異なる部分ですが、女性の好みや趣味は各国で違いますね。C CHANNELは実はどの国でもターゲットをF1層に設定しているのですが、文化や宗教が違うので、ヘアメイク一つとっても各国でニーズが違います。そもそもヘアアレンジの自由度があまりない国などもありますしね。また、海外の方が日本に比べてインフルエンサーの影響度が強いです。例えば中国にはパピーちゃん(papi酱※2)などの芸能人よりも影響度の強いインフルエンサーもいます。
反対に共通している点は、そもそもスマートフォンを持っていることが前提のサービスなので、ユーザーはある程度金銭的な余裕があるということや、文化が違っても、アメリカのセレブリティのメイクやファッションを参考にしているという点です。また、いずれの国もSNSやチャットツールの利用率が高く、それに伴って若い世代は自撮りの習慣が根付いています。中でも台湾は特に自撮りの機器が充実していて、自撮り専用のライトがついていたりします。日本はそこまで機器が充実していないのですが、CカメラというC CHANNELから出しているアプリを使うと、上手く撮れるのでオススメです。
※2:2015年10月から変声効果を入れた動画をネットにアップしたことから人気が出た中国のインフルエンサー。秒拍という短編動画投稿サイトのフォロワーは2000万人を超える。
分散型の戦略を取られていますが、各プラットフォームでの展開について教えてください
基本的にはfacebookに注力しています。facebookやInstagramは中国を除いて各国で一定のユーザーがいますが、アクティブな層が国によって違います。例えば、日本ではfacebookはやや年齢層が高めで、Instagramは若者が多いのですが、インドネシアになるとこれが逆転します。また、使われているチャットツール、国ごとに違います。ベトナムだとZaloフィリピンだとWhatsUp、中国だとWeChatや99、インドだとHikeといった具合です。国によってツールも利用者層も異なるので、このツールはこういった動画がウケる、というようなセオリーはありません。それぞれにどんなコンテンツが刺さるのか、国ごと、ツールごとに探っています。
動画プラットフォームとして、今後の展開について
C CHANNELは、日本のF1層の10%にリーチできるところまできたので、今後もユーザー数を増やすためによりターゲットユーザーのニーズを汲んだコンテンツ作りをしていきたいと考えています。現在も新しい取り組みを色々と準備している最中で、4月には「SUPER C CHANNEL」というイベントも計画しています。海外展開は引き続き積極的に取り組んでいきます。東南アジアに関してはベトナムで展開することが決まっており、東南アジア以外の欧米やインドの企業さまとのアライアンスの話も進んでいます。2017年1月時点で再生数は5億回なので、これを3月までには5億回以上再生数を伸ばすことを目標にしたいと思っています。また、再生回数の約8割は海外で再生される計画です。最近ではC CHANNELをアジア版BUZZ FEEDだと言ってくれる投資家さんなどもいて、そう言っていただける以上はそこを、もしくはそれ以上を目指して行きたいと思います。
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本稿は、fluct magazineに掲載された記事を転載したものです。