大阪大学国際医工情報センター 次世代内視鏡治療学共同研究部門の中島清一特任教授(常勤)らと、大衛、トクセン工業の研究グループは、経済産業省のサポートを得て、手術室や救命センター、外来処置室などでニーズの高い"ひとりで着脱が可能な手術用ガウン"を共同開発し、「セルフガウン」として実用化したことを発表した。

産学官連携により共同開発された「セルフガウン」

従来のガウンは、首ヒモ・内ヒモ・腰ヒモを結ぶ際にサポートスタッフの介助がなければ清潔に着脱できない設計だった。今回開発されたガウンは、首ヒモの代わりにバネ性のある特殊リングを首周りに編み込み、背中の引き合わせ構造を立体設計することで内ヒモを廃止。さらに、腰ヒモに特殊なミシン目加工を施し、粘着テープによる仮止め機能を付加することで、一切の介助なく着脱できる方式を実現した。

また、感染性物質の飛沫を防止できるよう、グローブを内側に巻き込みながら一緒に脱げるという点が大きな特長。従来のガウンは「先にグローブを脱いでから、背面のヒモをほどいて脱ぐ」手順で脱衣するため、グローブに付着した感染性物質が飛沫し、周囲を汚染するというリスクがあった。セルフガウンを用いることで、このリスクを事実上ゼロに抑えることが可能になったとのこと。

従来のガウン(上)とセルフガウン(下)の飛沫テストを実施した様子

同ガウンの導入により、着脱に必要な人員が削減されるため、多忙を極める医療現場の業務改善が見込めるほか、飛沫防止の機能各種医療事故の防止に大きく寄与する。また、大規模災害や救急の現場、感染症アウトブレイクの現場などでも、医療従事者の迅速な対応を可能にするとしている。

今後、3者は感染症対策専門家の意見も参考として、この着脱方式のさらなる改良を進める。また、この着脱方式は、医療分野以外で使われる、塵芥処理や放射性物質除染作業の着衣等にも応用可能で、介護衣類にも応用できれば、研究の意義はますます広がっていくとしている。なお、このガウンは、2017年4月10日に商品化予定となっている。